KORANIKATARU

子らに語る時々日記

フラッシュモブのように突如、英語が行き交いはじめた

久宝寺で区間快速に乗り換えた。
天王寺駅で5分ほど停車する間、外国人が乗ってくるのがちらほら見える。
韓国や中国といった顔立ちではない。
どこかアジアの国々、東南アジアあたりからの観光客だろう。

大阪環状線外回りの列車がゆっくりと動き始める。
下町の夜を背景に車窓には車内の様子が映る。

小さな雨粒が音もたてず窓を打って下方へと流れていく。

次の駅は新今宮。
そこでもまた幾組かの外国人が乗ってきた。

東欧系だろうかロシア人だろうか。
大阪には場違いなほど肌が白く透き通って美しい。
めいめいが空いた座席に腰掛けていく。

天王寺と新今宮、たった二駅ですでに結構な数の外国人が車両のなか混在しているという状態となった。

そして列車が走りはじめて間もなくのことであった。

まるでフラッシュモブ。
あちこちで一斉に英語での会話が立ちのぼり始めた。

さっきまでの静けさは跡形もなくなった。

どこから来た、面白い場所はあったか。
隣同士、そして通路をはさみ、やがては座席を縦断するように英語が行き交い始めた。

まさにフラッシュモブ。
いきなり英語でダンシングといった様子で身を乗り出しての会話が弾む。

わたしは通夜の帰りであった。
しかしなんだかとっても楽しい気分になってくる。

出自異にする者らがするライブな会話が大阪環状線を舞台として、いままさに世界を横断している。

温泉なら城崎がいいよ、との言葉が聞こえる。
「温泉なら有馬だよ、六甲山登って大阪平野見渡したあとに入る湯は格別さ」とわたしの頭には英語が浮かぶが、しかしシャイなので何も言わない。

車窓に映るその賑やかな輪に目をやって聞き耳を立て、わたしはわたしのやり方でフラッシュモブを楽しんだ。