いつものとおり和らかの湯に寄ってから帰宅した。
季節はすっかり春めいて、露天風呂では懐かしいような春の匂いを満喫できた。
家に戻ってあとは寝るだけなのだが、すんなり寝付けそうにない。
ここ最近疲労を覚える夜は滅多にないが、この日は違った。
風呂に入っても拭えない疲れがカラダに居残っていた。
どうやら老体。
時間差置いてから疲労が訪れるカラダになってしまったようである。
久々、家内に耳つぼマッサを頼むことにした。
アロマを使ってまずは頭から。
カラダの活性を取り戻すにはローズマリーが効果的だ。
ひと撫でふた撫でで驚いた。
いつの間にやら家内は腕をあげていた。
その昔、腕のいい散髪屋でしてもらったヘッドマッサの感触がよみがえった。
両手に頭を包まれ安心感あって、指の芯で各所のツボを圧されればあまりの気持ちよさに心とろけるのだが、その幸福が家庭で再現されたようなものだった。
そして、首が念入りほぐされて、施術のエリアが耳周辺から耳へと移っていく。
耳は全身とつながる窓のようなもの。
耳つぼ押せば話が早い。
それでカラダの手入れが手っ取り早く為されることになる。
安楽にひたりつつ徐々に意識が薄れていく。
閉じた目はもう開かない。
完全無欠な脱力の世界へとわたしは誘われ、再生果たされる朝までの時間、全き無に包まれた。