公園で野鳥が鳴く以外には物音ひとつしない明け方、門の開く音がした。
時計を見ると5時。
二男に違いなかった。
彼は本当に朝風呂に出かけたのだった。
どの湯がベストか。
ここらあたりなら六甲道の灘温泉。
前夜夕飯の席でわたしは二男に語った。
その場で検索し灘温泉に朝風呂があることを知った二男は、そのとき腹を決めた。
朝一番でそこに乗り込む。
彼もわたし同様、無類のお風呂好きなのだった。
いまどこ、と寝床から二男にメッセージを送る。
駅、と一言返ってきた。
思ったとおり彼は始発で一番湯を目指しているのだった。
わたしもベッドから起き上がる。
自身に向ける言葉は気合い。
前日のこと。
同窓会報の原稿集めのため後藤圭二吹田市長にメールを送った。
それが朝の9時だった。
原稿の締切は9月13日。
そうお伝えしていたので、その日の夕刻にピリリしまった原稿が送られてきたときには驚いた。
これでこそ行政の長、ジャルジャルの父。
その迅速なレスポンスに襟を正すような気持ちになった。
わたしは気合い一発ベッドから跳ね上がり事務所へとクルマを走らせた。
平素どおりに仕事をこなすが月末恒例、昼に時間をとって実家に寄った。
母を伴い昔なじみの寿司屋を訪れ、わたしは一半を頼み母は一人前を頼む。
そしてこれまたいつものとおり母は幾つもの握りをこちらによこすので、結局わたしが二人前食べ母は半分だけ食べたといった話になった。
いつまで経っても母は母なのだった。
母と食事し話題にあがるのは家族のことばかり。
そのなか先日父に贈った日本酒が昨晩で空になったとの耳寄り情報を得た。
継ぎ足し用の日本酒をまた調達しなければならない。
わたしが母と食事している同じとき、家内は二男と西宮北口にある番馬亭で昼食をとっていた。
場所も異なり年齢差も大きいが、母と子という点だけ取れば似た構図がここと向こうで同時進行していたのだった。
昼を食べ終えて駅まで歩く。
8月も最終日だというのにまだまだ暑く、容赦なく照りつける日差しに気も滅入りそうになるが、日陰に入れば通り抜ける風が心地良い。
番馬亭で二男はカレー蕎麦を食べてライスも平らげた。
滝の汗だとの報告を家内から受け、なんとも頼もしい気持ちになって、わたしもハンカチで汗をぬぐった。
ちなみにこの日の朝食はお肉たっぷりのカレーうどんであったこと、忘れぬよう付記しておかねばならないだろう。