この夜は本町のベルギービール専門店。
男5人が集まった。
ビール飲み放題で、コースのつまみは、バゲッド、ピザ、パスタ、ポテト。
家内がいれば制止必至。
わたしは一口もありつけなかっただろう。
そんなことを考えていると、一人が言った。
最も身近な人間を大切にすることでより良い社会が実現する。
たとえば女房を大切する。
そうすると女房は子どもたちを大切にし、親兄弟姉妹を大切にする。
大切にされた人間は周囲の人を大切にするから、人を大事に思う気持ちが伝播していく。
隅々まで行き渡れば、どんなに住みよい社会になるだろう。
なるほど、隗より始めよ。
皆が納得し、各自が各自の夫婦関係の良好について順々に語り始めた。
わたしの番になって、問われた。
奥さんを大事にしていますか。
間髪入れず、わたしは答えた。
家内にとことん大事にされています。
あっはっは。
わっはっは。
ほどよく酔いが回っていたこともあり、平和な笑いに場が満ちた。
本町で解散となって、帰る方向が同じ男二人で、たわわ光の実をつけた街路樹の通りを淀屋橋まで歩いた。
夜10時、地元の駅に到着しそこで空腹を感じた。
炭水化物過多とならぬようこの夜は柄にもなく自重した。
アルコールが先行したため、おそらく一時的、低血糖の状態になっているに違いなかった。
そんなときのためラーメンがある。
ちょうど長男に奨められていたラーメン屋があった。
カウンターに腰掛け麺をすする。
舌の肥えた長男が奨めるだけあって美味しく、わたしは即座、二男に写メを送り、これはうまい、と言葉を添えた。
すぐ二男からの返信が届いた。
彼によればこの夜、西宮エビスタで家内と一緒に晩ごはんを食べたという。
ピザとラーメンとたこ焼きと唐揚げを平らげたというから、彼こそベルギービールの店にふさわしい。
途中、カネちゃんやタコちゃんとのやりとりも折り混ざる。
ラインで各所を結びつつ、わたしは場末の一隅にて真冬真夜中のラーメンをひとり堪能したのだった。
もちろん、家内には絶対内緒の話である。