KORANIKATARU

子らに語る時々日記

気も遠くなるような長蛇の列

いよいよその日がやってきた。

待ちに待った1月19日。

 

そう、この日、ワールドカップラグビーのチケットが先着順に販売されるのだった。

だからもちろんわたしの予定帳の筆頭にはチケット購入の記載があった。

 

朝の9時。

慌てて気づいて、わたしはグーグルの検索窓にワールドカップラグビーチケットと打ち込んだ。

 

果たしてトップにチケット購入サイト。

わたしは全神経をそこに集中させた。

 

すでにすべてのチケットが希少であり素早く決断を下さねばますます入手が困難になるのは火を見るより明らかだった。


好みのカードを選びチケットがあれば何はさておき購入する、という姿勢で臨む他なかった。

 

だから価格がポンドやらユーロやらであってもワールドカップだからそのようなものなのだろうとしか思わず、1枚あたりが日本円で数万円と値が張っても、それが相場なのだろうと奇異にも感じなかった。

 

日本にいながら超世界級の試合を観戦できるなど一生に一度のこと。

家族の顔を思い浮かべれば奮発しても惜しいことはなかった。


が、何々戦のチケットがいま売れたといった煽るようなポップが画面をかすめて正気に返った。

典型的な焚き付け商法であり、下品にもほどがあった。


冷静になって見れば単なる転売業者のサイトであり、オフィシャルのように見え実は似て非なるものであった。

 

大慌てでわたしは公式のウェブサイトを探しアクセスした。

受付は午前10時から。


パソコン二台を交互に見つつ順番待ちし、うんともすんともいわない静止の案内画像を眺めてしばらく過ごすことになった。


が、午前10時になっても状況は変わらない。

にらめっこを続けあきらめかけたとき、突如、クリックが可能な画面に変わった。

 

すぐにわたしと家内の分のID登録を済ませログインし、すでに残り僅少という在庫状況のなか購入可能なチケットを血眼になって探した。


東京でのオーストラリア対ウェールズ戦、そして花園でのアルゼンチン対トンガ戦。


運良くチケットを無事入手でき家族の喜ぶ顔が浮かんだ。

しかし、と一抹の不安がよぎる。


もし万が一家族のうち誰かの予定が合わない場合は一生に一度のチャンスを逃すことになる。

大枚はたいてそうであっては虚しい。


予備日があるべきであったし、冷静に考えれば、日本戦の入手は無理にせよせめてプールAの試合は観るべきであろうと考えた。


購入画面にしぶとく食らいつきなんとか横浜でのアイルランド対スコットランド戦、神戸でのサモア対スコットランド戦のチケットを買い求めることができた。

 

安い買い物ではなかったが、最強チームがぶつかる屈指のカードが含まれ、それを家族で観戦できるのであればいくら高くても適正価格と言ってよかった。

 

役目を果たせてやれやれ一安心。

いったんパソコンから離れ、戻って驚いた。

 

ログイン画面はともに待機画面に変わって、そこに順番待ちの人数が記されていたのであったが、その数14万人。

 

長蛇といった形容では全く足りない、途方もない数字であった。

10時10分にしてもはやチケットは購入不能という状況なのだった。

 

それで一層増しの安堵感が込み上がり、家内に戦果を伝えラインで二男にもこの吉報を知らせた。

 

しめて4戦。

スケジュールがうまく合えば、東京、横浜、大阪、神戸とMAX4箇所をまわるちょっとしたツアーとなり、もし予定が合わずとも少なくとも何試合かはこの目で観ることができる。

想像するだけで心浮き立つことである。


夜になっても冷めやらぬ話題となり、ひっそりと静まる猿沢池からならまちあたりを家内と歩きながらワールドカップラグビーについてわたしは語った。


夕飯は旬食炉端 板焚屋。

地の野菜や鶏肉、豚肉がとても美味しく味覚でも奈良を満喫していると、映画青年二男からラインが入ってそこにはこうあった。


クリード観るべし。

大興奮。


西宮ガーデンズでひとり観てその感動を父に伝えずにはいられなかったようである。

余韻にひたってシャドーボクシングする二男の姿が目に浮かんだ。


日曜の天気予報はあいにくの雨。

映画観て過ごすのもいいかもしれない。

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2019年1月19日午後8時 奈良 旬食炉端 板焚屋