日曜の夜、焼肉丼を食べながら二男が言った。
映画ならおすすめは『アラジン』。
もう一回みたいほど。
善は急げ。
月曜の夜、夫婦で『アラジン』を観に行くことにした。
早速その場で劇場を探し、なんばパークスシネマの席を予約した。
日曜に訪れたOSシネマズ神戸ハーバーランドの席は大の大人が座るには狭すぎた。
隣に座る中年男性の呼気から漏れ出るタバコの臭いがわたしの吸気に滲み込んで不快であったし、ガサゴソとポップコーンを手で探りクチャクチャと咀嚼する音も耳障りであった。
太っているから暑いのだろう、団扇で扇げば扇ぐほど生煮えしたような汗の臭いが熱を帯びて届き、広げた足がわたしの足にしばしばあたって、その度悲鳴をあげそうになるほどの悪寒を覚えた。
それに比べれば天と地。
なんばパークスシネマのスクリーン9の座席はいわばグリーン車並の快適さであった。
ゆったり広々としていて、隣席に誰が座ろうと気にならず、映画を観る幸福にたっぷり浸れる居住感があった。
午後6時過ぎ、『アラジン』が始まった。
物語自体が、親が子に語って聞かせるという構造を持つ。
出だしは船上のシーン。
父が子らに語って聞かせる導入部から、一気にわたしたちはその世界に引き込まれていった。
もともと家内がちびっ子だった息子らに何度も読み聞かせてきた物語である。
家内は昔の思い出にひたりつつ、かつての子らと同様のワクワク感をもって話に引き込まれていったに違いない。
歌って踊ってハラハラ・ドキドキ、実に楽しく、挿入歌に心震えてアラジンとジャスミンの恋の行方に胸ときめいて、ハッピーエンドにこっちまで幸せになるという、大満足の映画鑑賞となった。
家内は全編にわたって感動し、わたしは、最後に自由を得て喜ぶジーニーの姿にもっとも強く感動を覚えた。
自由であること、それがどれだけ大切で貴重で価値あることか、ジーニーの喜びぶりから再認識することになったし、それは強く望まなければ手に入らないのだと子らにも是非伝えたいと思った。
やはりたまには映画を観ないといけない。
夫婦でそんな会話をしつつ難波の街を歩き、当初予定していた淳ちゃん寿司が休みだったので通りにあった市場ずしに入った。
サザエ、カキ、アワビ、トロ、ヒラメのチリ、頼んだすべてが美味しく夫婦揃って気に入った。
もちろん、しめは定番のトロたく。
食事を終え、二男のために会津屋のたこ焼きを買い帰途についた。
映画を観てご飯を食べてたこ焼きを買う。
なんだか学生がするデートみたいで、すべての要素がささやか素朴なことばかりであるが、実は昔からこんな感じで過ごしたかったのだと、互いにピンとくるような印象深い月曜日となった。