卒業旅行の行き先は別府温泉とのことである。
入試日程がまだ残る友人を待って、終われば皆で湯につかる。
メンバーは同じ部活の同級生たち。
まさに6年間、苦楽を供にした仲間である。
温泉が選ばれたのはメンバーの中に大の風呂好きがいたから。
その二男、いまも連日、灘温泉に通う。
六甲道にいい湯があるのを二男に教えたのはわたしであった。
それで事あるごと二男は足を運ぶようになり、友人らが家に泊まりに来たときには当然引き連れ、そんな基本スタイルが別府温泉という卒業旅行に結実した。
裸の付き合いの促進にわたしが一役買ったと思うと嬉しい。
東京で暮らす長男も連日友だちと連れ立って銭湯で汗を流している。
それを聞いたときどれだけ安心したことだろう。
確かな繋がりは風呂で育まれる。
わたしの風呂好きが息子らの人間関係を深く豊かなものにしたと言え、わたしは自身の手柄を吹聴せずにはいられない。