日曜早朝。
ラグビーの練習があると言ってこの日もまた息子が先に部屋を出た。
家内とともにその背を見送って、チェックアウトの時間までのんびり過ごし山手線で東京駅に出た。
風爽やかな秋晴れ。
自然、気持ちも浮き立った。
ビジネス街の広々とした緑陰の道を歩くだけで楽しい。
冬に向け山越えの空気がカラッとし始める。
だから秋から冬にかけ東京の空気感は格別なものとなって心地良い。
二重橋を左手に見て通り過ぎ、パレスホテルのスイーツ&デリで土産を買い、続いてフォーシーズンズホテルの最上階に向かった。
昼食はイタリアン。
眺望が素晴らしく、皇居の向こうに富士山のシルエットがくっきり見えた。
貫禄十分。
やはり富士山の存在感は日本一と言えるものであった。
テラスから吹き込む空気が清涼で視界にも恵まれ、食事は美味しさを増した。
食後は夫婦で丸の内の仲通りを散策した。
休日のくつろぎ感が初秋の風に乗って隅々まで行きわたり、そこに身を置くだけで心が和んだ。
家内が買い物をする間、わたしは通りを眺めて想像を巡らせた。
東京で暮らしていたらどんな風であっただろう。
中学受験のことが頭に浮かび、ネットで日能研の偏差値をみて驚いた。
早稲田も慶應もどちらも高偏差値で関西で言えば甲陽や東大寺の域にある。
つまりハードな戦いが避けられない。
目に映る景色は平和そのものであったが、ここで子育てをして幸せになれたかどうかは定かではない。
気が重くなる手前でわたしは空想をかき消した。
まあなんとか及第点でブラインドサイドを駆け抜けた。
それで十分。
他の有り様を考えたところで意味のないことだった。
夕刻、浜松町からモノレールに乗り羽田で飛行機の時間を待った。
家内が赤ワインを飲み機嫌よく、機体が浮上し饒舌の度も増した。
まもなく大阪の灯が見えて、タクシーで30分もせぬうち家に着いた。
秋が更に深まる頃、今度は二男の住処探しのため上京することになる。
何かと理由をつけて一緒に過ごす。
巣立った後、どんな影響を誰から受けるか分からない。
だからこそ親が顔を出してのコミュニケーションが欠かせない。
もし妙な影響下に置かれていれば父としてそれに対峙する必要がある。
そう思っているが、いまのところ良き影響ばかり受けているようであるから杞憂は杞憂のまま終わることになるだろう。