家内が美容室にいる間、わたしは武庫川を走った。
夕刻、駅で待ち合わせて一緒にホームにあがった。
と、そのときアナウンスが流れた。
JR神戸線の須磨駅で列車がお客様に接触したとのことだった。
このところ頻発しているように思える。
日を置かず、誰かが列車に接触している。
たったいまそうであった人の直前の胸の内を想像してみる。
土曜日の夕刻、ホームにひとり立つ孤独を思って胸締め付けられた。
電車に並んで座って、家内の二万語に耳を傾ける。
その間も長男と二男からそれぞれメッセージが届き、それらに返信するうち北新地に着いた。
他のことを考えるいとまはなく、接触事故のことは意識の向こうへと消え去っていた。
スエヒロの横の通りを南に進んで突き当たったビルの6階。
緒乃は歩いてすぐの場所にあった。
中に入ると、ハロウィーンだからとハイジとクララの装束をまとうご婦人らがいて、お菓子をもって出迎えられた。
そんな楽しげな雰囲気のなか、大将のトークも冴えて料理はやはり絶品だった。
帰宅するとちょうど10時。
夫婦で「二月の勝者」を見ながら思う。
一緒にテレビを見る女房がいて、息子らからはしょっちゅう連絡があり、次の予約が取れたから声を掛けようと思う友だちがいる。
幸いにして孤独と無縁。
また会いたいと思う人がいる限り、ホームにひとり立って虚空を見つめることはないだろう。
そういう意味でやはり縁が命を守ると言え、それが最重要と子らに何度でも伝えることになる。