庭園に雨が降り注ぐ。
そんな光景を目にしながら朝食をとるため一階におりた。
レストランの選択肢は二つあった。
焼き立てのクロワッサンが美味しいとのことで「FORNI」を選んだ。
メニューについても洋食か和食のどちらかが選べた。
絶対に和食がいい。
家内の意見に従った。
飲み物に続いてクロワッサンが登場した。
一口食べて思った。
やはりこれは外せない。
次回訪れた時にもここを選ぶことになるだろう。
まもなく朝食を載せた大きなプレートが運ばれてきた。
品目が多く目に鮮やか。
期待に胸が膨らんだ。
口にする何もかもが味わい深く、夫婦で頷きあって感嘆し、なんと豊かな朝のはじまりなのだろう、そう思った。
給仕のサービスにも心がこもっていて何もかもが行き届いていた。
単なる一般人であるわたしたちにこんなによくしてくれるなんて。
そんな感謝の気持ちで心まで満たされた。
朝食を終え、テイクアウトのコーヒーを手にロビーに移った。
京の都に降る雨は一味ちがう。
庭園に降る雨を眺めていると、今日の天気といった時間感覚が薄らいでいった。
ここは千年の都であって歴史が紡がれてきた場所なのだった。
そう思えば、今日一日のことなど数の内に入らなくても当然という話だった。
朝9時になって、分厚く空を覆っていた雲間から薄明かりが差し始め、雨があがった。
家内は散歩に出かけ、わたしは街を走った。
雨上がりの冷気がことのほか心地よく、いつにも増してハイペースで疾駆した。
二条城から京都御所を経て鴨川を渡り平安神宮まで足を伸ばし、そこで折り返した。
将軍やら天皇やら歴史に名を連ねる多くの人物がこの地に「実在」した。
そんなことを考えながら、この足で京の地を駆け、たっぷりその空気を味わった。
復路で京都御所の中へと入って走っていると、なんという偶然、家内がはるか前方にいてこちらに手を振っていた。
やあ、と言葉を交わしてすれ違い、めいめい京都の情緒にひたって満喫し、その一時間後、ホテルの地下にあるサーマルスプリングSPAのジャグジーで再会を果たすことになった。