自転車屋が開くのは朝10時だった。
その時間に合わせて家を出た。
暑さのせいだろうか。
自転車の後輪がパンクしていた。
前回修理を頼んだ自転車屋まで押して運んだが、移転してしまったのか店が見当たらない。
それでネットで調べ商店街の外れの店へと移動しタイヤの交換を頼んだ。
おかんの残した自転車である。
文字通りママチャリであるが、交換にあたり最高レベルのタイヤを選択するのは言うまでもないことであった。
待ち時間が生じると見込んだとおり40分はかかるというから自転車を預け近くのミスドで朝食兼昼食をとった。
できるだけさっさと家を出たいのでこのところ朝は食べない。
朝昼兼用を外でとるという習慣がすっかり根付いた。
ついでに夜もどこかで済ませ、チョコなど買って帰って自室にこもる。
自分一人が生きるうえで家など不要。
最近つくづくそう思う。
自室と寝室があれば足りるのでちょっとしたマンションの一室で十分暮らしが成り立つ。
かばんに忍ばせてあったパソコンで業務をしつつ、わたしは33期たち同志のことを思った。
猿ぐつわを噛まされたうえに手足縛られ袋詰めにされ、まるで砂袋のごとく罵詈雑言で殴打される。
周囲に褒められ重んじられた人生がどこでどう間違ってこうなってしまったのだろう。
いつの間にか人生の晩年。
もはやここに至っては学校で教わったように「だれかがあなたの右の頬を打つなら、左の頬をも向けなさい」と同類相憐れむしかないのかもしれない。
であれば、せめてわたしたちの間でだけは互いを褒めて重んじよう。
修復された自転車を受け取り、気温が上昇の一途をたどる土曜の正午、わたしは家には寄らず自らを修復するためジムへと向かった。
もしかしたら別の行き先があるのかもしれない。
そんな考えがふと頭をよぎったが、どこへ行けばいいのか見当がつかず、わたしは惰性のままペダルを漕いだ。





