KORANIKATARU

子らに語る時々日記

頑丈にも楽しい時間が引き続いている

この土日、業務がないので旅に出た。

なんとはなしに選んだ行き先は鹿児島だった。

 

一泊二日を思いつきで家内と過ごす。

子育てを終えた夫婦にとってそんな無目的な時間が実に楽しい。

 

空港へとタクシーで向かう。

車内に流れる音楽の選曲がいい。

それで気づいた。

以前乗ったことのある個人タクシーだった。

 

いつぞやは、といった会話をしていると、メッセージが届いてiPhoneに目を落とした。

イギリスの警察からだった。

読むとこんな下りがあった。

 

I can see you and your wife enter the station and after you have passed through the ticket barriers. 

Here I can see that your bag is already open and this leads me to believe that the theft has occurred prior to you entering the station as there is no one around you in the station.

 

夏に訪れたロンドンでパスポートや現金を盗まれた。

 

てっきりタワー・ヒル駅ですられたものとわたしは思っていたが、真相は異なった。

カフェでお茶して駅へと向かうほんの10分ほどの合間、知らぬうちに事は終わっていたのだった。

 

その手際の良さにぞっとしつつ、同時になんだかとても懐かしい。

 

駅の録画動画に映っていたわたしたちは、「もっとも楽しい時間」を過ごしていた。

さあ、これからロンドンで思う存分、遊ぼう。

 

旅行前半のちょっとしたトラブルを無事にくぐり抜け、あとは行き慣れた街でくつろぐだけ。

大事なものを盗られたことにもまったく気づかず、そんな安心感と解放感にひたっていた。

 

直後、二人して顔色を失うが、それも数時間だけのこと。

あれから数ヶ月、幸いないことに「もっとも楽しい時間」が頑丈にも復元されて引き続いている。

 

捜査官は動画を凝視し視認した。

バックはすでに開いている。

が、そのとき。

知らぬが仏の夫婦ふたりは幸福MAXの境地にあった。

そこまでは見て取れなかったことだろう。

2024年10月5日 伊丹 → 鹿児島