航空券を取ったのは去年の9月のことだった。
行きも帰りもいい席が確保でき、それで安心しきっていた。
気づけばあれから5ヶ月もの月日が経過した。
にも関わらず、宿については手付かずのままだった。
さすがに痺れを切らせた家内に強く促され、この日わたしはパソコンの画面に張り付いた。
一気に片付けようと気合い一発、ホテルを検索したが数があり過ぎて、気が遠くなりかけた。
高ければいいというものでもないのだろう、口コミが伴わない。
わたしはパソコンの画面に見入って途方に暮れた。
そんなわたしをさっさと見かぎり、家内はパリ在住の友だちに相談の連絡を入れた。
すぐに向こうから電話がかかってきた。
パリで過ごすなら観光地ではなく「町」を楽しむべき。
まるで天啓といった助言を受け、話がとんとん拍子で進んでいった。
告げられるおすすめホテルについて調べると口コミもいい。
おかげで即決することができた。
ああ、やれやれ。
あとはその日が到来するのを待つばかり。
この日常の先に良き「町」が姿を現す。
それが希望の光。
そこはどんな町で、そこでどんな時間が流れるのだろう。
夫婦共有の一生の思い出が、その未来にて形を成し始めているのであるから、思い描けば心が弾む。
その日まで絶対に生き抜かねばならない。