KORANIKATARU

子らに語る時々日記

芦屋への疾走、そして解放の夜

業務終了地点が太子橋今市で、そのとき時刻は午後5時半だった。

 

待ち合わせは午後6時で場所は芦屋。

到底間に合わない。

 

それでもベストを尽くした。

Googleマップを見ると、東梅田に出て阪神電車に乗れと出た。

 

帰宅ラッシュの人混みを縫って急ぎ足で移動し阪神電車の構内に入るとまもなく直通特急が発車するところだった。

 

駆け込んだ。

確か芦屋に停まるはず。

関西最大最高の富裕地である芦屋に停まらないはずがない。

 

安心しきっていたからか。

電車は芦屋に停まったはずなのに不覚にもわたしは気づかず、三宮の手前、遠く魚崎へと行き過ぎてしまった。

 

それでも挫けずベストを尽くした。

階段を駆け上がって反対側のホームへと急ぎ、直後に発車する直通特急に滑り込んだ。

 

今度は慎重に見定めて芦屋駅で降り、電車から一斉にはき出される帰宅者のなかに混ざって夜道を歩いた。

数分後、予定より一時間遅れてようやくのこと、店に到着することができた。

 

先に家内が始めていると思いきや、テーブルにはまだ飲み物しかなかった。

待っていてくれた。

と思ったが、単に料理に時間がかかっているだけなのだった。

 

ちょうどよかった。

わたしの到着と同時に、次々料理が運ばれてきた。

 

わたしは待つことなく料理にありつけ、ああ、はるばるやってきた甲斐があった、空腹が満たされ疲労が癒えた。

 

何事も緩急が大事。

こうした緩む時間があってこそ、人生が輝きを増す。

 

この3月は忙しく土日もない。

 

こんな忙しさはまっぴらご免。

だから、早く過ぎ去れと強く念じて仕事にかかり、思った以上に早く難所が過ぎ去って、どうやら今週末くらいには解放される見通しがついた。

 

全5セットの土日うち残り2セットはどうやら我が物にできそうである。

だからなんとも清々しい。

 

店内を見渡せば周囲は芦屋の富裕な方々だらけだった。

そんななか、わたしたちはどこまでも部外者であったが、まあときにはこんな社会見学も必要だろう、混ざっただけで心地よい錯覚が生じて気分がいい。

 

大満足の食事を終えて帰り際。

伝説レベルの人気を誇る焼鳥屋「永来権」の予約をとった。

その3月末日は、わたしにとって晴れての解放記念日となる。

 

静かな夜道を女房と並んでJR芦屋駅へと向かって歩き、深い喜びと共にしみじみ思った。

もう二度と、こんな忙しさに相まみえることはない。

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2025年3月13日夜 芦屋 水炊き こはく