乗り継いだ後、機内のWi-Fiが機能した。
シートにカラダを預けゆったりくつろぎながら業務をこなした。
現場からはるか遠く離れ、かつ地上からもかけ離れていて、その距離感が仕事に余裕をもたらした。
グローブのオンスがかわって、仕事というパンチがふんわり化する。
そんな感じだった。
業務を終えるとあとはくつろぐだけだった。
ほんとうに飛行機というのは過ごし良い。
食事が出て飲み物が出て、映画など見放題である。
まるで、ゆりかご。
そう喩えられるだろう。
このゴールデンウィーク中、上の息子はマレーシアへと仕事で出張となるが、下の息子は大阪に帰って来る。
そのため、家を空ける間も安心して過ごせる。
昨夏のことを思い出す。
迂闊にもロンドンでスリに遭い、わたしはパスポートを失った。
ちょうどそのとき、ホッケーの大阪代表の試合に出るため、下の息子が帰阪していた。
おかげで本籍地入りの住民票の写しをすぐに取得でき、渡航証の発行手続きもスムーズに進んだ。
本当に、幸運だったとしか言いようがない。
まもなくパリ。
そこでわたしと女房は、昨年末に放送された「グランメゾン東京」をみはじめた。
画面に映る京都や東京の街並みに、懐かしさがこみ上げる。
そして、ふと差し挟まれるパリの風景に、旅への期待が一層高まった。
気づけば、13時間のフライトはあっという間だった。
飛行機は静かに、シャルル・ド・ゴール空港へと着陸した。
スムーズに出国手続きが済み、朝9時過ぎ、パリの地を踏みしめた。
吐く息も白く染まる冷涼な空気に、心がぞくり震えた。
タクシー乗り場の列に並びながら、わたしたちは旅の始まりの昂ぶりを全身で味わっていた。