KORANIKATARU

子らに語る時々日記

U2のSongs of Innocenceを聴きながら家まで歩く

U2の「Songs of Innocence」全11曲がiTunesのプレイリストに並んでいる。

購入済み、と表示されている。
新譜が出たならどの道買うけれど、これについては買った覚えがない。

調べるとAppleの粋な計らいで世界中に配布されたということだ。
U2好きにはたまらない。

久々の新譜である。
じっくり聴こうと、昨夕仕事場から自宅まで約12km強を歩いて帰った。
音楽を聴くなら歩きながら一番いい。

青一色の空の明度が次第に翳って黒に近い濃紺へと移り変わっていくなか、二号線を西に進む。
光がちょうど地上へと降りてくる時間帯だ。
往来のネオンやクルマのヘッドライトが煌々と灯り始める。

意外性に富みしかし耳心地のいいサウンドが絶えず打ち寄せ、深く暗示的なフレーズが随所で心を捉える。
U2ならではの要素が洗練の度を増している。
これまでのなか、ベストのU2的凝集度と言えるのではないだろうか。

どれもこれも素晴らしいが、それら話し出せばキリがない。
例えば、Raised by Wolves 一曲でも耳すれば、強いサウンドと深みある表現力に心揺さぶられU2が放つ魅力が理解できるに違いない。

この曲は1974年のダブリン・モナハン爆弾事件をモチーフにしているという。
5:30 on a Friday night 33 good people cut down,,,
さりげなく歌われる簡潔なフレーズに事の次第のおぞましさが凝縮されている。

音とともに歩き、音に鼓舞され自ずと血流が増すかのようであり、音に操られるように歩調が強く、速くなる。

時折、無性に気になるフレーズに出合うが聞き取れない。
その度に歩調を緩めてiPhoneで歌詞を確認する。
にわかには理解できない。


含意汲み取れないフレーズがあるのは毎度お馴染みのことである。
何度も耳にしてそのうちいつかしっくりくる、U2についてはそんなものだと気長に構えるしかない。

まもなく、武庫大橋の照明灯が見えてきた。
遠く控える六甲の山を背景にその暖かな光が美しく映える。
いつしか、これまで折々U2を聴いてきた各場面の光景が意識のなか綯い交ぜとなっている。

私は武庫大橋を渡りつつ、冬の水道橋界隈を歩き、アムステルダムのシティセンターに向かう車窓の風景に眺め入り、雨にけぶる紀州路の山間でクルマのハンドルを握る。

帰宅すると、料理の巨匠マダム・スミレコが特製パスタと焼きホタテを用意してくれていた。
ビールが冷えてなかったのは玉に瑕だが、お腹こわさないようにという無意識の配慮があったものと気にせずゴクリと飲み干した。
微かU2を口ずさみながら私が食事していたことに家内は気づいてなかっただろう。