1
秋の空気は柔らかくカラダは安らぎ、だから何を食べても美味しく感じられる。
まもなく正午という時間。
食の煩悩がむくりと起き上がり舌なめずりしながら、どれにしようかな神様のいうとおり、と昼食の選定をし始めた。
ふと、遠い記憶が蘇る。
ある警備業の会社を訪れたときのこと。
そこの従業員の会話が耳に入った。
「吉野家の牛丼は、出汁が奇跡だ。
それに気付いている人が一体どれだけいるだろう」
足は真っ直ぐ桜口の吉野家に向かった。
奇跡の味を堪能する。
たったの300円。
2
引き続き難波へ向かう。
少し時間があった。
本屋に寄る。
長男のため参考書を物色する。
私たちの頃と比べ、良書が盛り沢山である。
ビジュアルに工夫が凝らされ目に優しく、分かり易い。
物理化学については素人に毛が生えた程度ではあるが受験生に負けはしない。
数冊の基本書を購入する。
参考書を通じ長男とやりとりする光景を思い浮かべる。
ああ、楽しい。
学校の勉強はすでに高校レベルであり英語についてはすでに高校過程を終えたのではという進度であるが、私も合流し、大学受験というテーマに相席することになる。
早いものだ。
さっさと子らを大学へ送り込み、あとは気楽に暮らすと決めている。
あと数年、ああ待ち遠しい。
3
中学受験を終えたばかりの母親の話。
家内から聞いた。
ママ友らで受験を振り返るような話となったとき、いまだに必ず涙するという。
本番が近づくに連れ、緊張は極限に達していった。
逃げ場はなく、母なのだから自分がしっかりしないといけない。
気力振り絞るような毎日。
もともとは楽観的な性格のはずであったが、気楽に構えて吉報が約束されるような世界ではなく、その冷徹な現実を前に精神的に追い詰められた。
甲斐あって、関西随一の最難関に合格できた。
二日間の入試を終え合格発表直前は気が変になる寸前といっても過言ではないほど心が乱れた。
言葉にできないほど苦しかった。
だから思い出せば、いまも涙が止まらない。
大学受験は子の受験。
もはやそこまで気苦労することはないだろう。
4
帰宅すると天六の福効医院からインフルエンザ予防接種の案内が届いていた。
従来の3価ワクチンが今年から4価ワクチンになり発症抑制効果が更に高まった。
朝晩の寒さが増してきた。
インフルエンザ感染者もチラホラ出始めているらしい。
我が家にとっても季節の恒例行事。
ボジョレーヌーボーが解禁される頃までには接種を終えておかねばならない。