南森町に着いたとき、雨はすっかりあがっていた。
訪問先への道すがら、大阪天満宮に立ち寄った。
本殿では祈祷が行われていた。
ずらり並んで座るのは小学生だろう。
中学受験の統一試験日まで50日あまり。
ぐっと緊張感高まっていく時期である。
背筋のピンと伸びた小さな後ろ姿を見ながら手を合わせ、仕事に向かった。
業務を終えたのが夕刻5時。
待ち合わせが6時半なので間があった。
雑多猥雑な大阪に静か落ち着け無心になれる場所は多くない。
天神橋筋商店街を北上し、横浜珈琲に腰を据え過ごすことにした。
iPhoneを使い日記を書いて1時間。
家内から連絡が入った。
わたしは商店街を南へ向かう。
食事時、という時間帯だからだろうか。
右も左も飲食店だらけ。
やたらと目についた。
一歩進むごと無数に生え出て軒並べ続けているかのようにさえ見える。
一生かけても全店制覇などあり得ない。
その数に圧倒される。
大阪天神橋。
泣く子も黙る食の激戦地である。
丸万寿司のあたりでこちらに向いて歩く家内が見えた。
横に二男の姿もあった。
スーツ姿のわたしを見て、二男が笑って言った。
カラダごついから、めっちゃこわい人に見える。
どこが怖いのかわたしにはとんと理解出来ないが、家内も笑った。
もと来た道を戻って天神橋筋商店街を北上する。
向かうはアネロ391。
着いたときすでに店は満杯だった。
予約していて正解だった。
座るなり家内が店員にあれこれ質問し注文する品を決めていく。
味に定評ある人気店。
何を頼もうがすべてが正解であった。
制服を着たままであり、場馴れしていないからか二男は最初居心地悪そうに見えた。
Have fun in any situationやで、と息子に声をかけ、何であれ学びの時間、どんな状況をも楽しんでしまうことが大事だと話した。
共通の話題として、家内がまたまた『ボヘミアン・ラプソディ』の話を取り上げて、二男が言った。
『ワンダーウォール』であれば、もっと話題沸騰となるのではないか。
ワンダーウォールと言えばオエイシス。
言わずと知れたUKロックの金字塔である。
おお、なるほど、とわたしは言うが、家内はクイーンが上だと譲らない。
そんな話が助走となって、部活終えたばかりの二男の食欲がトップスピードに入っていった。
家内とはじめてアネロを訪れ、いつか子を連れてこようと話し合ったのは約2年前。
当時の日記「生活の実質を実感した夜」をみればつい数日前のことのように思えるが、相当な月日が経過し、ようやくこの日、思いが叶ったということになる。
食事を終え3人肩を並べて南森町へと歩く。
そもそもが思い出深い地であるので、わたしと家内は時の流れを振り返って感慨もひとしお。
二男にとってもこの時間はいつか思い出す懐かしの一コマとなるだろう。
期末試験後には焼肉やっちゃんに行こう、家内がそう提案し、即刻、全員一致で可決確定となった。
子が育ち、ここ数年でいろいろなことがすっかり落ち着いた。
月日の経過はもう不要。
すぐに叶う話である。