家内に勧められ、久々、プロの手によるマッサージを受けた。
肩に手が置かれただけで、カラダが歓喜し小さく震えた。
さすが家内が太鼓判押すだけのことはある。
そこから背中一面あちこちのツボが押され、あまりに気持ちがよくて声が漏れ出てとろけてしまう。
もちろん痛い箇所も随所にあったが、身も心も委ねて痛みに耐え、しかし声だけは垂れ流しという状態になって、これを恍惚と言わずしてなんという、そんなことを忘我の淵で一人ぼんやり考えた。
吐息とともに、疲労がすべて排出されてわずか60分でカラダが新品に取替えられたかのよう。
カラダが軽く、動きがシャープ。
空気まで美味しく感じられた。
見事に蘇生が果たせ、これで明日からもばりばり業務がこなせるだろう。
つくづく思う。
こうなる前に、こまめに疲労は除去しておかねばならない。
帰宅し、家内の手料理を食べつつ晩酌。
マッサージの神技について語りつつ、2曲立て続けに出た息子の新曲を夫婦で聴きはじめ、結局、話題は新曲のことだけに占められることになった。
親バカ追い風参考意見とされるかもしれないが、彼が非凡の域にあることは疑いようがない。
歌って踊れて喋りが面白く、宴会芸で困ることのない男であると幼い頃から見込んでいたが、大学に入って2ヶ月でこの完成度に至るとは想像もしなかった。
シビアな評価眼持つ二男もこれはトリプルAだと舌を巻き兄貴の才を認め、その評を受け更にわたしたち夫婦も天才出現との確信を強めるのだった。
余技でここまでいけるなら、本分である学業では更に目を見張る結果を出してくれるに違いない。
欲を言えばキリがないが、言うだけならタダであるので、夫婦で楽しく図に乗った。
それにしても彼はわたしと一緒で、控え目な性格のだろうか。
密かに発表して済ませるのではなくもっとアピールすればいいのにと思いつつ歌声にじっと耳を傾けた。
が、その心情を汲み取るどころか描出せんとする世界自体が中年の思念を軽く超え出て正体不明。
息子と暮らした平成は、もはや遠くになりにけり。
嬉しさ八分で寂しさ二分、そんな気持ちが綯い交ぜの夜となった。