慌ただしく一日が過ぎ夕刻。
あ、憩いの時間だと気づいて心安らぐ。
家内にメールし買うものなどがあれば帰途に調達する。
ウイスキーを飲みながら料理に箸をつけ家内の話に聞き入る。
料理もさることながら話の内容も充実している。
一日のうち一番いい時間と言えるだろう。
これで際限なく食べて飲ませてくれるなら、なお格別と言えるのだがそうはいかない。
やや少な目、それがわたしの益になっている。
そう思って分量の方は諦めるしかない。
子持ちししゃもと銀鮭、そしてアボガドサラダと茹でピーナッツ、揚げと若ごぼうの煮物。
この日もヘルシーな料理が並んだ。
話題はマスク。
地元のドラッグストアで見知らぬ老婦に家内は話しかけた。
このあたりでマスクが買える薬局はありますか。
マスクを継続的に入手するには弛まぬリサーチが欠かせない。
だから、機会を捉えて情報を得ようと家内は動く。
マスクについて根堀り葉掘り聞くものだから、よほど困っていると見えたのだろう。
老婦は家内を駐車場まで手招きし、クルマのなかからマスクをひと束取り出した。
東京にいる息子が送ってきたものだけど、良かったら使って。
家内はもちろん遠慮した。
マスクの必要度で言えば老婦の方こそ欠かせない。
買い足し分を求めているだけなので、大丈夫です。
家内は丁寧に断って、そして心温まった。
土地柄だろうか。
ほんとうに良い方が多い。
通りを渡るとき、クルマがきちんと停まってくれる。
といったことをはじめ、譲り合いの精神が端々にまで行き渡っている。
入手が困難となるなか、わたしたちは他の誰かにマスクを進呈しようと思えるだろうか。
そんな話をしつつ締めは栄養満点のテールスープ。
聞くところによれば大阪星光では53期の中岸さんが母校に2千枚ものマスクを贈呈したという。
愛知の豊川市が中国に寄贈したのが4千枚だというから分量として全くひけを取らない。
善意があってこそのコミュニティと言えるだろう。
もし我が身大事と皆が何でも独り占めする世であれば荒土も同然。
そんな世界はウイルスの有無を問わず生き辛い。
そういう意味で大阪星光はなかなかのコミュニティを成している。
同期はおおむね仲が良く先輩はたいてい心優しく後輩は等しくみなかわいい。
そんな星光愛に教師も漏れなく貫かれれば一枚岩だが、そこまで思うのは分量を望みすぎというものなのだろう。
「感染爆発 重大局面」と小池都知事が緊急会見した夜8時、そんなことを夫婦で話した。