わたしも結構息子のことを思うが家内の比ではない。
文字通り四六時中、寝ても覚めても。
何かにつけ息子らのことを考える。
家内の場合、子離れどころか、いまもってつながっているというしかない。
臨時休講になったのは日曜だけ。
結局、週が明けてすぐ春期講習が再開となった。
長男からそんな連絡が入ってすぐ家内は動いた。
息子が何を必要とするのか。
家内の頭にはあれやこれやが自動的に浮かぶ。
もちろん、そこには不要なものまで含まれる。
だから余計なお世話という側面も否定し難いが、そこは物量がものを言う。
差し引きすればプラスが勝る。
迷惑が感謝を凌駕するなどあり得ない。
長男はバイトでスーツを着用している。
家にいれば彼が着たシャツを毎日洗って、念入りに汚れを落としてアイロンもかけてと仕上げる家内であるだろうが、いま息子は東京。
だから形状記憶が選ばれた。
手軽に洗濯できて、乾けば即袖を通すことができる。
その他、食料。
肉を焼くのが定番で、その他、あれもこれもと食材が詰め込まれた。
もちろん娯楽の品も忘れない。
多少なり社会勉強にもなる。
そう言って今回家内が選んだのは漫画『正直不動産』。
わたしと家内が読み終えた第三巻までを東京行きの荷物に添えた。
そして今回の荷物の核となるのが命を守る品。
家内が街中を徘徊して手に入れたマスクと消毒液が投入されてこれで万全。
まるでへその緒でまだつながっているようなものである。
盛りだくさんの品々が、無限に伸びるその緒を伝って、長男のもとに届くことになる。
荷造りを終えたところで、二男が戻った。
深夜に差し掛かろうとする時間帯。
家内は食事の支度にかかろうとした。
が、それを制して二男は自分で夜食を作り始めた。
ご飯をフライパンで手際よく炒め、同時、カップヌードルの麺を粉々に潰し水に浸し、ご飯と合体させて更に炒めて出来上がったのが、そばめしならぬカップヌードルチャーハン。
いまをときめく大流行の品だそうである。
うまそうに食べる二男を夫婦二人で眺める。
あっという間に平らげ、異なるフレイバーのカップヌードルを手にし二男が二作目にかかろうとしたその瞬間、インスタントはそこまで、と家内がすがって息子を止めた。
やはり、へその緒。
好ましくないものは子の体内に届かぬよう阻止するのであるから、いまもってつながっていると言うしかない。
そのつながりは永遠で無限。
子離れなど、起こり得るはずがない。