業務を終え、明石駅で途中下車した。
改札を抜けると家内の姿があった。
待ち合わせ時間より早く着き、あたりをぶらぶらしていたという。
夕刻、太陽は雲間に隠れ風が涼しい。
二人並んでぶらり歩いて向かうは寿司大和。
子らが小さい頃、よく訪れた。
明石公園で遊んでから寿司大和。
それが当時の定番だった。
なにしろ安くて美味しい。
本格的な寿司が若気の懐で味わえたから、人生に漕ぎ出したばかりの若夫婦にとって奇跡のような店と言えた。
うちの息子らはこういった救いの名店の恩恵を数々受けて育ってきた。
おかげでちびっ子の頃から味覚が育まれ、カラダがごつくなり同時に口も肥えた。
懐かしさも手伝って、近々再訪しようと家内と話し合っていた。
それがこの日実現したのだった。
座敷に座って、定番どころを注文していった。
いろいろと美味しい寿司を食べてきたが、やはり寿司大和はとびきり美味しい。
家内と互い顔をほころばせ、おいしい、おいしいと言って何度も頷き合った。
せっかく共に歩く人生。
やはり夫婦でたまにおいしいものを食べるべきだろう。
特上、チリ、刺身、酢の物、煮付けと食べてお腹も心も満たされた。
二男の夜食にする折詰を受け取り店を後にした。
駅までの道すがら花を買い、駅のショッピングモールで二男のための服を選んだ。
週末にはアウトレットに出かけ長男の服も選ぶのだと家内が張り切っている。
頭の中はいつだって息子のことばかり。
余計なことを考えるより、はるかに健全と言えるだろう。
帰ってあとはドラマを見るだけ。
長男が帰省したら寿司大和に誘ってみよう。
快速電車に並んで座り、そんな話ばかりする家路となった。