京都へと向かう二男を送り出し、わたしたちは三田プレミアム・アウトレットへとクルマを走らせた。
開店前なのにすでに駐車場は満杯に近かった。
遠方からの客も目立つ。
岐阜やら香川。
そんなナンバーを見つけるたび家内が喜ぶ。
まるで小学生である。
いくつか店を一緒にまわるが、わたしは楽しめない。
根っからの買物嫌い。
食堂でひとり待機することにした。
昼はまだ当分先なのに、どんどん席が埋まって賑やかさが増していく。
そんななか本のページをめくっていると、電話が鳴った。
先日、無事再選を果たした島田くんからだった。
選挙後の片付けや挨拶回りもようやく落ち着いたとのこと。
33期の皆によろしく、ということだった。
買物を終えた家内が現れ、二人で向かい合ってそれぞれ三田屋の和牛ステーキとハンバーグを食べた。
腹ごしらえを終え、続いては丹波。
数あるなか、末晴窯の作品がいちばん愛らしい。
注文してあった品を受け取って、そこに描かれたツバメの絵に見入っていると、上空をツバメが行き交った。
ああ、丹波は素晴らしい。
そして丹波に来れば食材調達が欠かせない。
味土里館に立ち寄った。
メロンにスイカ、丹波の地に成らないものはない。
あしださんちの初産みたまごを含め地産のものを各種買い揃えた。
帰宅したとき、神の白糸との異名を持つ井上製麺の詰め合わせが届いた。
これでしばらく朝はずっと麺類になることだろう。
食材を冷蔵庫に収納してから家内と国道2号線沿いのジムへと歩き、半時間筋トレ、半時間有酸素運動をこなした。
帰りにミート甲子園を覗いた。
店頭にないレアな上モノを店主が奥から出してきた。
オススメだというので、勧めに応じた。
その足で十一屋に寄り特売のワインを買い、ドラッグストアで蚊取り線香を買った。
夫婦でそのままベランダに直行。
わたしは炭に火を起こし、家内は焼肉の支度に勤しんだ。
京都にし田の肉が余っていたので、そこから手をつけた。
やはりダントツ、抜群にうまい。
家内と差し向かい飲んで食べ、ああ息子の帰りが待ち遠しい。
京都での模試の終了が午後7時。
まもなく帰ってくるだろう。
遠く、電車がホームに入る音が聞こえた。
あの電車に乗っているに違いない。
わたしが家内にそう言ったとき、ベランダの窓に大きな人影が映った。
待ちに待った二男であった。
夫婦で驚き、その登場を祝いだ。
三人で七輪を囲んで、さあ、仕切り直し。
二男のための肉を焼き始めた。
まずはロースから。
彼の左手にはボウルに入った白飯。
ミットにボールが吸い込まれるように、ロースがボウルに吸い込まれそして息子がそれをかっ喰らった。
ああ美味しいと息子が顔をほころばせる度、夫婦で相好を崩した。
炭で手が汚れ、夜風が吹いて肉の油と煙にまみれる。
原始的な開放感が、親密さをいや増しにしていく。
もう満腹。
しかしそれで宴は終わらない。
うちには家族がもう一人。
ここから先、夏の宵闇のもと皆で手分けし長男に送るための肉を焼き始めた。