大阪でなら西田辺の「きじ歯科」、阪神間でなら大物の「たかおか歯科」。
院長はそれぞれ阪大、東京医科歯科大出身であるが、元はと言えば大阪星光の33期。
星光生は通う歯医者さんにも困ることがない。
この日、二男は「たかおか歯科」で新調したマウスピースを噛み締め卒業試合に臨んだ。
ひさびさ66期のチームメイトが集結した。
砂塵さえ灼ける炎天のもと、午後2時半、彼らがグラウンドに姿を現した。
役者揃い踏みとも言える光景が眼前に広がり、胸に熱いものがこみ上げた。
わたしは直射を受けながら、そして、家内は日陰から一眼レフを構えた。
対する相手は67期を中心とする後輩チームだった。
長いブランクがあったからだろう、前半は膠着したが、後半、先輩が貫禄を見せつけた。
66期と67期が真剣に戦ってこその別れの儀式と言えた。
言葉は不要。
この90分で最上のコミュニケーションが交わされたことは明らかなことだった。
わたしたち夫婦にとっては、これが大阪星光の見納めとなった。
終わりよければすべてよし。
良き締め括りの一日となった。
試合後は水入らず。
皆で風呂に行って、そのあとで焼肉を食べるという。
そして、次の日は66期のチームメイトで有馬温泉に行くというから、一体どれだけ風呂が好きなのだ。
星光で6年間、毎日、皆で励まし合ってきた。
際になればなるほど名残惜しい。
思いは皆一緒なのだろう。
わたしは試合を見届け、上本町の天山閣に向かった。
二男の大学合格を祝して、28期の松井先生が一席設けてくださったのだった。
先月はタコちゃんに阿倍野の寿司屋に誘ってもらったし、来週はカネちゃんにミナミの寿司屋に連れて行ってもらう。
道中届いたメールを見れば、アドレスが変わったという33期モッチンからの連絡。
まるで空気。
同級生とはいつまでも同級生であり、OBとの距離も近い。
星光生の日常には、大阪星光が空気のように溶け込んでいるも同然と言えた。
松井先生に伺ったところ、星光の東京OB会の活動もかなり盛んで良き世話焼きが揃っているとのこと。
今後、星光生が受験で東京遠征する際、東京OB会で何か支援などできるのではないだろうか。
なるほど名案。
先輩が力を貸してくれるなら百人力。
OBの力を束にすれば星光からの東大合格者数が倍増といったことも起こり得るのではないだろうか。