陽光を受け新緑が目にも鮮やか涼風にそよぐ。
その向こうは青一色。
あまりに心地よく自転車を漕ぐだけで笑みがこぼれた。
この日、家内は自転車を駆って事務所界隈を縦横無尽に走破した。
その昔、城主に仕える実務家たちが暮らす町であったから、大阪の谷町はいまで言えば霞が関に喩えられるだろうか。
戦火を免れた寺社仏閣が多く残存し、古式ゆかしい町並みが生き永らえていて街全体に落ち着きが感じられる。
そんななか思いがけない所に聞こえ高い名店を幾つも見つけることができる。
だから、漕げば漕ぐほどサイクリングは楽しいものとなった。
家内の話を聞きながら、夕刻、一緒に帰途についた。
毎日が新鮮で、まるで新居で暮らし始めた新婚夫婦みたい、そう思えた。
事務所移転の転地効果と言えるだろう。
家に着くとすぐ家内が即興で夕飯をこしらえ、ひとつの鉄鍋を囲んで谷町界隈について語らった。
美味しくて楽しい。
息子らが巣立って暮らしは次のステージへと移行した。
あとは思う存分、仕事を頑張るだけとなる。