新たに体重計を購入し、毎朝それに乗るようになった。
かれこれ3か月継続し、いまでは欠かせない習慣として根付いた。
朝、どのような数字と対面することになるのか。
それが意識の端にあるから、自ずと食べる分量に気を配るようになった。
数字がアメとなりムチとなる。
なるほど、指標があれば真面目人間はごく単純。
それに心とらわれることになるのだった。
結果、少しずつ体重が落ち始めている。
習慣という確かな導き手を得たのであるから、不適切な分量の肉塊はゆっくり着実に削げ落ちていくことだろう。
食べる分量を少なくする。
一言にすれば簡単だが以前のわたしにとってこれはかなりハードルの高い課題だった。
昼夜を問わず食欲が湧き上がる。
それをねじ伏せ一勝するだけでも難しく、連戦連勝するなど気が遠くなるような話だった。
それが、数字という形で対峙した途端、戦わずして勝てるようになった。
たとえば、仕事を遂行する際のタスクノートも似たような効果を生んでいる。
課題を頭のなかにだけ留めていると相手がやたら手強く思えて腰が引け、呆気なく土俵の外へと弾き出される。
ところが、相手をノートに書き下していけば、その土俵では自ずと相手の実像が明瞭になって上手をがっちり取ることができるようになる。
これと同様。
持て余していた食欲が、毎朝の体重という次元に焦点を移したことで与し易いものとなった。
食べることが数字と紐付きになって、意外なことに嫌な思いを誘発させる。
つまり、食べることが嫌、という新しい地平が切り拓かれたのだった。
苦戦するなら戦う土俵を変えて見る。
この戦法は他にも幅広く応用が効くのではないだろうか。