記憶は定かではない。
神戸でピザを食べた帰りだろう。
ということは長男が5歳で二男が3歳。
どこか建物の前で二人がおどけて踊っている。
ともに笑顔。
そんな写真を自室のデスク横に貼ってある。
仕事を終え武庫川を走り先ほど宅急便の再配達を受け取り、一日の用事がすべて終わった。
Andre Gagnon のピアノ曲を流し、心地よく弛緩しその写真をぼんやり眺める。
何かホルモンが分泌されての幸福感。
科学的にはこの現象にそう説明がつくのだろう。
現象の只中、ただ思う。
この二人に会えてほんとうに良かった。
クロネコヤマトから届いたのは書籍であった。
さすが話題作だけのことはある。
アマゾンでは新刊の在庫がなく、楽天ブックスにて注文した。
秋の夜長。
脱アルコール派にとって秋の夜はことのほか長い。
深酒するよりクリアな頭で読書に充てるのがもっともふさわしい。
一方、佐川急便から届いたのはユーア化学の入浴剤だった。
これが香りよく肌にしっとりきて実にいい。
渋谷のホテルで出合って気に入り、このほど注文したのだった。
風呂につかって長編の物語のページを繰る。
窓からは涼風、湯は甘く匂い立つ。
至福の秋と言えるだろう。
10月になれば007の新作が公開となる。
長男の中学受験が終わって間もなく、梅田の映画館で家族揃って『スカイフォール』を観た。
以降の作品については、子らは各自友だちと観てわたしは家内と観たので、あのとき一緒に観ておいてほんとうに良かったと思う。
家族総出で007を観た記憶は一生もの。
つまり、うちの家族にとって歴史の一ページになったと言ってもいいだろう。
本も音楽も映画もすべて、いいと思うものは息子らと共有する。
いいものに出合うと自分が得するより子らに伝えることができるので、それが嬉しい。
これも何か科学的に説明のつく行動なのだろうが、親はただシンプルに思う。
伝える相手が二人もいるから張りがある。
ああ、ほんとうにありがたい。
日の没しつつある中年から、日の出ずる処の息子らにいろいろなものをリレーで繋ぐ。
老い先短く自身は先細っても、それがどうした、息子が二人。
50を過ぎた一介男子の現在地点。
子らが秋の深まりをより良いものにしてくれる。