土曜の朝、家内を西宮北口の駅まで送ってから武庫川に出た。
日本海側に大雪警報が発令され、ここら界隈もかなりの冷え込みとなったから手袋と帽子を着用して走った。
二夜連続でマッサージを受けていたからカラダが軽い。
走って心地よく快調の度は増し、そして念には念を入れ、昼過ぎ、みずきの湯へとクルマを走らせた。
岩盤浴に入るのは何年ぶりのことだろう。
ちょうど二男が中学受験に臨む頃、家内が足繁く通いわたしもしばしば同行した。
家内にとって子の受験は巨大なストレスだった。
岩盤浴が不可欠だったのであるから、相当にハードな日々であったと分かる。
弛緩し横たわり、岩盤浴の効能をわたしは改めて思い知った。
なんて気持ちがいいのだろう。
全身が隅々まで温まり、じんわりと出る汗とともに心中にまとわりつく雑念まできれいさっぱり浄化された。
帰途、鳥芳で焼き鳥を買い十一屋でワインを買ってから家内を西宮北口で迎えた。
西北で寒さに触れて、家内も昔のことを思い出していた。
だから家に帰って二人で受験の思い出話を語り合うことになった。
長男は中学受験を直前に控える11月になって能開センターに転塾した。
ラグビーに明け暮れ準備は不十分だった。
このままではやばい。
そんなセンサーが家内のなかで発動し、面倒見のいい塾を頼みにしたのだった。
それで何とか無事駆け抜けることができたが、蓋を開ければ元の塾の仲間たちはことごとく不本意な結果に終わっていた。
振り返って肝が冷え、受験初心者であったわたしたち夫婦はその苛烈を実感として思い知ることになった。
だから、準備万端ではあったものの、二男のときには長男のときにも増して本番が迫って恐怖した。
勝つか負けるか。
すべてが時の運、紙一重。
そうと知るから落ち着けるはずがなく胸の内は乱れに乱れ悲痛であった。
幸い長男に続いて二男も無事に切り抜けることができた。
そして揃いも揃って、勉強はほどほどに好きなことに勤しんで、多く友人を作りスポーツに励み留学も経験するという充実の学校生活を送ることになった。
ほどよく不真面目に日々を楽しんでそれでもまあ上位を維持できたから真面目で下位になるよりいいではないかと親もおおらか過ごし、この時期はこの時期で平穏な時代と言えた。
が、結局、その不真面目のツケが回って、大学受験では苛酷さが増してそれはもう息が詰まって苦しい幾日かを夫婦で過ごすことになった。
なんとか二人が二人ともそれ相応の結果で終わってああやれやれ一件落着となったのではあったが、やはり、そのストレスは試験前から合格発表までを通じ超弩級であった。
立春とは名ばかりの凍てつく寒さの夜。
床暖、エアコン、ガスストーブなど暖房器具を総動員しリビングで過ごし、もっとも暗く寒くてつらかった日々を夫婦で振り返った。
わたしにとっては中5日での飲酒。
二人でワインを注ぎ合って一緒に焼き鳥を食べ、最も身近に心通じる飲み仲間がいて、それを幸福だとわたしは思った。