地元の街を歩くと至る所で昔の記憶がよみがえる。
商店街に散髪屋がある。
店の前に「子ども調髪900円」との掲示があって、懐かしい。
その昔、息子たちはここで髪を刈ってもらっていた。
息子たちは様変わりしたが、店構えは当時と何ら変わらない。
子どもたちは言った。
スタッフによって腕に差があり、店長が群を抜いて上手い。
通いはじめてまもなく彼らは店長になついて、ともに店長を指名するようになった。
やがて二男は家内に連れられ美容院に「転向」したが、長男は高校生になってもずっとそこを行きつけの床屋にした。
通算すれば分厚い年数になる。
そこに通って、その生い立ちを知るほどまでに長男は店長と仲良くなった。
最後に訪れたのは、大学受験の結果が出揃って、上京する前のことだった。
慶應に行くと報告し、そしてそれがそこでの最後の散髪になった。
いま長男は原宿で髪を切ってもらっている。
指名料を入れて8,500円というから、子ども調髪のときからすれば価格激増と言える。
今度帰郷した際、数年ぶりに店長を訪ねて、昔馴染みのバーバーチェアに腰掛けてみるのはどうだろうか。
大人調髪は1,700円とある。
腕によりかけ、8,500円以上の散髪をしてくれるのではないだろうか。