家から新大阪まで30分もかからない。
そして、流行りのドラマでも観ているうち、あっという間に東京に到着する。
大阪駅で環状線に乗り換えて、天王寺に行くより手軽、と言えるかもしれない。
だから、夕に思い立てば、朝に家内の姿は東京の地へと至る。
このところ頻度も増して、出歩くとすれば大阪の街より東京の街と言ってもいいくらいかもしれない。
この日はまず最初、長男の部屋を訪れた。
息子がいると分かっていたから渋谷で寿司を買い込んで差し入れし、先日送った肉をさっとあぶるなどして即興で料理を作った。
そこにいるのは自分の息子で、気軽といってもやはり遠路はるばるといった感があるから、単なる日常の一シーンであっても感慨深い。
料理をこしらえ、長居は無用。
さっさと退散し、タクシーを使って続いて家内は二男の住む地を訪れた。
二男は留守。
それで駅前の喫茶店で待ち合わせることにした。
息子が現れるのを待つ時間は、母というより女子といった心象に近いのだろう。
家内の注文した品がプリンアラモードだというからそう類推できる。
やがて二男が現れて、目の前にいるのは当たり前だが自分の息子。
そこにすっくと立つのが愛する我が子なのであるから、わざわざ時間をかけてやってきた甲斐もあったという話だろう。
ちょうど夕飯時だったから、二男を誘って店を出た。
息子に聞けば、メキシカンがいいと言う。
だからその一択で、駅近くにある人気店へと移動した。
夕飯をともにし近況を聞き、息子に手を振りそしてホテルへと帰る。
軽くいっぱいやりながら、東京の夜景を向こうに眺め、ひとりドラマに見入る。
家内からそんな一日について話を聞いて思う。
わたしからすれば、よほどこちらの方がドラマと言える。
単に母が息子に会うだけの話であるが、そこに至る長い長い道のりを知っているから、些細なことにもじんとくる。