二重橋駅の改札前に長男が現れた。
エレベーターを使い5a出口から地上にあがってそこでタクシーをつかまえた。
お茶の水のフレンチの店に着いて注文を済ませたとき、二男が姿を現した。
これでひさびさ家族四人が勢揃いした。
シャンパンで乾杯し、そして赤ワインで乾杯した。
息子たちは近況を語り、わたしたち夫婦はこれまでの道のりを振り返った。
結局ボトルは三本空いた。
続いて今度は店の前からタクシーに乗って大手町に向かった。
ホテルのテラス席に四人で腰掛け、小雨降る東京の夜景を眺めてカクテルで乾杯した。
息子たちは今後の抱負を語り話が尽きず、わたしたち夫婦は思い出を語り、やはり話が尽きなかった。
わたしたち夫婦には何もない。
ことさら大事にするようなものは何もなく、すべて代替が利くから、特筆すべき持ち物など何も思い当たらない。
が、わたしたちには息子がいる。
唯一無二が二人もいて、それが何よりも確かで喜ばしいことだと思える。
千代田線の改札で長男を見送り、東西線の改札で二男を見送った。
結婚23年目、何も持たない夫婦の心は息子二人によって満たされた。