雨があがってジムに向かった。
カラダをとことん追い込み走って泳いで、その後、家内が料理教室に出かけた。
冷蔵庫のなかに食べるものはあったが、ぶらりと近所でビールでも飲むことにした。
ひとりでも退屈しない。
昔の写真など眺めると、思い出の扉が開く。
意識は酒場のカウンターを抜け出して向こう側にてひと時やすらぐ。
そこには随所に母の姿もあって居心地がいい。
母が病に倒れたのは昨年の四月のことだった。
苦しい状態であったはずなのに、わたしの顔を見るなり母は言った。
「タローは元気か、ジローは元気か」
どんな状況でも孫のことを案じ、思いやる。
ほんとうに心優しい母だった。
常々、母は言っていた。
健康ならそれで十分。
子どもや孫に何かを求めるようなことはなく、元気だと聞けばそれだけで大いに喜んだ。
だから、わたしもそう思う。
ただ元気でいてくれればいい。
自分のことなどどうでもよく、息子らが元気であればそれ以上望むことなど何もない。
家内も同じ思いであろうし、わたしの父も同様だろう。
母も含めて計四人。
元気であれとこい願いその四人が二人の血肉のなかに息づいている。