心の中まで浄化されるかのような、目にも鮮やかな青空のもと武庫川に出た。
走りながら、思う。
ワークアウト後に何を食べようか。
焼肉が浮かび冷麺が浮かんだ。
長田あたりに足を向け、辛々のホルモンを頬張り冷麺を啜ろう。
一歩一歩を刻みながら、その光景を思い描き、わたしは夢見るように走っていた。
7kmほど走って着替えてすぐ今度は自転車にまたがってジムに向かった。
筋トレしつつ思うことも同じ。
この後、何を食べようか。
夢みて力を込め、しかしやや疲れが出たからだろう、考えが変わった。
長田まで行くのはいくらなんでも遠すぎる。
どこか手近に焼肉屋くらいあるだろう。
夢は現実と手を結び、自在にその形を変えていくのだった。
一日のルーティンを果たし終え、風呂につかって思う。
ジム活動を通じ、内も外もクリーンになる、この感じが実にいい。
日頃の穢れをここで浄化しているようなものと言っていいだろう。
内に巣食う夾雑物が運動によって焼却され、サウナで肌の目詰まりが除去されて、風呂ですべてがきれいさっぱり洗い流される。
身も心も清まる。
つまり都市生活者にとってジムは母なる大河ガンジスのようなものなのだった。
風呂場を出るとき、出入り口のカーテン越しに女性の声が聞こえ足が止まった。
会話から、そこでアカスリが行われているのだと分かった。
やはり浄化。
この「ガンジス」はそこまでサービスが行き届いているのだった。
ジムを終え、チャリンコをガーデンズに停めた。
Tシャツと短パンとサンダル。
部屋着とも言える格好でぶらり繁華街を歩いて、北口の飲み屋街に焼肉屋があったので迷わず入った。
食べ始めてまもなく大松という店名に見覚えがあることに気づいた。
ああ、長男が大学入試を目前に控える年末のことだった。
西大和での親子面談を終え、帰り道、父子で立ち寄った焼肉屋が梅田の大松だった。
コウネやミノサンド、上タン塩などおすすめの品は結構うまい。
たっぷり焼肉を食べながら、ビールを飲んでチューハイを飲んでハイボールを飲み、外はまだ明るく青空が広がり、とても気分がいい。
一日の義務を果たし終えた清々しさに、なんとか頑張り家族を食べさせてきたのだという自負心も生じ、気分の良さは増していった。
たっぷり食べ、自分だけ食べるなど申し訳ないのでアクタの山垣畜産に寄って家内のための焼肉を選び、ガーデンズの成城石井で家内のためのスパークリングとチーズと生ハムなどを買い求めた。
晴れ渡る空のもと秋の涼風に吹かれつつ家へと向かう。
まもなく月曜となって、その先には仕事の喧騒が待ち構えているが気分がいい。
どんとこい。
この日の道は運動と焼肉に敷き詰められた。
英気を養う上で最良のコースと言えた。