木曜日はジムが休み。
代わりに武庫川を走って家を掃除した。
拭き掃除はマシンを使うよりはるかにキツイ。
ジムでみな拭き掃除をすればいいのでは。
そんな図を思い浮かべつつ、家をピカピカに磨き上げた。
窓から吹き込む風が清涼。
風に吹かれ満足感が込み上がる。
ジムを終えた後の充実に勝るとも劣らない。
火曜、水曜と飲んだので秩序回復が必要だった。
ノンアルを手に食卓について、家内の話に耳を傾けた。
この日、家内は大阪の美容院を訪れていた。
帰り際、電車に乗ると、同じ店に来ていた女子を見かけた。
ここで話しかけるのが家内である。
聞けば長野からやってきたのだという。
夜行バスで朝着いて、そしてこの夜にバスで帰る。
介護職にあって仕事がキツく、おまけに通勤にクルマで25分もかかるからたいへんで、いま10分程度の距離の会社に転職しようと思っている。
だから、気分一新のため髪を切りにきた。
とても可愛らしい、素朴な感じの女子で家内は気に入った。
あ、シャンプーも買えばよかった。
女子が独り言のように言い、それを家内は聞き逃さなかった。
たまたま家内はシャンプーを買っていた。
さして欲しくもなかったが、まあ、付き合いということで買ったものであったから惜しくはなかった。
これ使ってと家内は女子にシャンプーを差し出した。
女子は戸惑い、いえいえ受け取れませんと固辞したが、構わず家内は粗品粗品といって手に持たせた。
別れるとき、女子が言った。
大阪は山がないから、来るといつも少し変な感じがするんです。
なるほど、長野は「アルプス」とも呼ばれる山が四方にそびえ立つ。
比較すれば、生駒や六甲など、山というより丘のようなものだろう。
家内の話を聞いて、わたしの目には、空の過半をも占める長野の壮大な山々が浮かんだ。
隣の小窓に目を注げば、そこにはいろいろな景色が広がっている。
家内はいろいろなところで人に話しかけ、その景色をキャッチする天才と言っていいだろう。
先日泊まった京都のホテルでは山梨からお越しの婦人と仲良くなっていた。
同じ場所で過ごしているのに、わたしは小窓の向こうに目もやらず、内にこもっている。
家内を少しは見習うことで、人生はより豊かなものになるに違いない。
家内が今後の課題をわたしに指し示しているようなものと言っていいだろう。