トークが冴えに冴え、動きにまったく淀みがない。
明瞭にそうなるから、家内の場合、ヘッドマッサを受けたことを隠しようがない。
マッサ当日は、ふんわり感が散逸しないようジムを休んでおとなしく過ごす。
一夜明け、溜めに溜めた出力が全開となる。
この日も家内は早朝から起き出した。
再帰省した長男のための食事を作り、続けざま、パルヤマトの開店に合わせクルマを走らせ二男に送るための食材をかき集めた。
途中、クルマのガソリンを満タンにし洗車もしてもらい、家に戻ってすぐに料理の仕込みをはじめて、同時進行で玄関前に水を撒いてブラシでこすり、一階から三階まで掃除して家を磨き上げた。
仕事納めを終えわたしが帰宅した夕刻、家はピカピカとなり、その時点で二男に宛てた荷物の発送は済んでいた。
そしてわたしと一緒にジムへと赴くのであるから、ヘッドマッサの威力たるや恐るべし。
ジムを終え夕飯時に至っても口数が減ることなく話し続け、友人らとの合トレを終えて長男が帰宅した際には、更にテンションがあがった。
このように家が実に楽しく明るくすべて行き届いているのはまずもって家内のおかげであるが、そこにヘッドマッサが一役も二役も買っている。
うっかりすれば予約が取れなくなってしまうほどの人気を誇るサロンとのことで、だからヘッドマッサの月一の予約が途切れぬよう来年12月まで日程を押さえているのだという。
それを聞いてわたしは安心した。
来年いっぱい楽しく明るい家が約束されたも同然ということである。
夜、寝る前、長男は家内からフェイスマッサとヘッドマッサを受ける。
その様子を傍から眺めて気がついた。
来年彼は社会人になる。
実家でゆっくり過ごす機会はこれが最後ではないか。
そうと気づいて、しかしわたしは家内にそのことを伝えない。
ヘッドマッサの威力に水を差すなどあってはならないことであった。
ただ黙って、わたしは母子の平和な光景を目に焼き付けた。