朝、武庫川を走って家に戻ると家内も早朝から起き出し、二男のための食事の用意を整えていた。
わたしもおこぼれに与った。
料理教室で修得したとおり本場さながらの具材で作った参鶏湯は過去一の美味しさで、二男も絶賛することになった。
まず最初、二男が出発した。
梅田で集合しレンタカーに分乗して京都へと向かうとのこと。
移動手段が大学生っぽく、実に楽しそう。
試合終了後の打ち上げは京都で、そのあとみなで友だちの下宿を寝床にするというから、これまた大学生らしくて、青春のよき1ページとなる一日を祝福したいような気持ちになった。
わたしもぼちぼち仕事に出かけた。
電車は空いていて、日頃、弾丸が飛び交うような梅田の人の流れも緩やかなものになっていた。
人の表情がなごやかに見え、金券ショップには外貨両替のための列ができていて、ああ、年末なのだとの実感が湧いた。
仕事納めの日、昔と異なりわたしが受け持つ仕事はほとんどなかった。
気持ちのほぐれるままデスクに腰掛け雑用だけこなした。
一年をくぐり抜け、束の間、スローダウンできる最上の時がやってくる。
そう思うと顔がにやけた。
夕刻、事務所にて皆をねぎらい、正月の飾り付けを施してから家路についた。
帰宅の途にある人々を運ぶ電車の中は穏やさに溢れていた。
いつだって毎朝毎夕、こうであればいいのに。
そう思った。
家に帰ると、家内がキッチンで料理の総仕上げに大わらわであった。
カウンター越し、料理屋の女将に酒をすすめるみたいに、わたしは家内のグラスにビールを注いだ。
ゆったりと静かに過ぎる時間の流れをのんびり味わいつつ、料理のおこぼれをあてに飲み始めたとき、長男からメッセージが届いた。
この日彼も仕事納めの日を迎えていた。
が、まだまだ業務の真っ只中で、仕事を終えたあと上司らと飲みに出て今夜は夜通しの宴になるかもしれない、とのことだった。
年末の予定が変わるかもしれない。
わたしはそう察知したが、家内には何も言わないでおくことにした。