晴天の日曜日、家内は旅先にあって留守。
早朝、いつもと同じ時間に目が覚めて、特にすることが何もない。
だからまず先、普段と同様にランニングを済ませることにした。
気温が1℃しかなく寒さがこたえるが、その分、かすかに感じる春の到来を心から喜ぶことができる。
そういう意味で暑さ寒さは四季のうちもっともいい季節を深く味わうためのスパイスのようなものと言えるかもしれない。
そんなことを思いつつみっちり60分走って家に戻った。
家内が作り置きしてくれたカレーを食べ、やはり他に何もすることがない。
だから一日のルーティンを前倒しでこなそうとジムへと向かった。
正午、巨大プールはガラ空きだった。
その空いた具合に同化して、ほとんど無となりのんびり泳いだ。
気づけば45分もの時間が過ぎていた。
当初は30分も泳げばへとへとだった。
この歳になってかなり体力が増しているということなのだろう。
続いてマシンを使っていつものメニューをこなし、どこか食べに行くのも面倒だったから、成城石井で惣菜と飲み物を買って帰宅した。
時刻はまだ午後3時。
空は明るく青々としていた。
が、結構ハードに運動し、心地いいにしても疲労があって青空のもと出ていく気にはとてもなれなかった。
だから、あとは休息と決め込んだ。
ぷしゅーとビールを開けて空を見上げて喉へと流し込んだ。
走って泳いでビールをごくり。
この三位一体がたまらない。
どれか一つでも欠ければ至福には及ばないから、この日わたしは「大いに喜ぶ」というゴールに向け最短距離を突っ走ったようなものと言えた。
年を経るごとに、わたしの行動範囲は狭くなり、そのバリエーションもごく限られたものになっている。
家内が不在になるとそれがよく分かる。
それを老いだと思っていたが、見上げた空が告げていた。
余計なものが削ぎ落とされて、わたしの幸福の源泉が、最適な組み合わせへと少数精鋭化されているだけのことなのだ。
精鋭らの顔ぶれはごく限られていて数える程度。
残り時間は長くはないが、精鋭とだけ過ごすのであればそう短くもない。
だから、まだたっぷりとこの人生を謳歌できると見通せる。