雨が降り止まず、せっかくの日曜なのに何をして遊ぶか方針が定まらない。
ぼんやり過ごそうか。
そんな雰囲気に傾きつつあったが、それではやはり勿体ない。
花見がてらドライブしよう。
そう言う家内に連れられて、わたしたちは家を出た。
まずは夙川方面へとクルマを走らせた。
川沿いを進むが、まだ桜は三分咲きといったところだった。
しかし、桜の木が間断なく立ち並び、それが雨にけぶって醸される風情は尋常ならざるものであった。
わたしたちは惚けたように、その美に見入った。
途中、クルマを停めてカフェに寄った。
雨音を聴きながら珈琲を飲んで過ごし、一体何をしているのだ、これでは時間が勿体ないと思い直した。
店を出て、傘も差さず夙川沿いを二人で歩いた。
そこら樹木や草木と同様にしっとり雨に打たれて、そこに生まれる一体感のようなものに夫婦でひたった。
川の流れが雨音を吸い取って一帯は静けさに包まれ、甘美な花の香りが雨を伝って辺りに広がっていた。
こんな濃密な時間に出合えることはなかなかない。
雨の日曜、女房と花を見て過ごし、そう思った。
今週、近隣各地の桜が一斉に満開へと向かう。
この時季だけは毎日が非日常。
そう心得て、花見を主とするのが正しい春の過ごし方と言えそうだ。