ひとっ走りし終えて思い立った。
さあ、出かけよう。
東京でも名古屋でも。
そう意気込んで家内に声をかけようとするが、引き続きその表情に疲労の色が見えた。
だから土曜の行楽は近場で済ませることにした。
離れていてもまずは息子らのことが先にくる。
家内はそう一貫して揺らがない。
まずはららぽーと甲子園に寄ってZARAで息子のTシャツを幾つも選んだ。
放っておけば彼らは草臥れたTシャツをそのまま着かねない。
だから随時、安くても新しいものを家内が送る。
店で選んだのと同じものをネットで申し込めば郵送してくれる。
離れて暮らす家族にとってとてもありがたいサービスと言えた。
そのまま芦屋へと移動し大天に並んで軽く寿司を食べ、続いてダニエルにて本題に入った。
さて、今度どこを旅しよう。
あれこれ話すうち、家内に情報がもたらされた。
家内にとって実の妹も同然といった存在がいる。
フランスを旅していて偶然知り合った。
彼女は韓国政府のフランス語通訳としてフランスを訪れていて、休みの日に美術館巡りをしていた。
家内の方から話しかけ意気投合し、一緒に美術館を回って仲良くなった。
そのあとで韓国で会い、日本でも会い、こっちでマスクが不足しているときには韓国からマスクをどっさり送り届けてくれた。
そんな彼女がいまフランス語の教授職にあり、このほど「ザ・ヒュンダイ・ソウル」で展示されるアート作品の翻訳を手掛けた、とのことだった。
では、ソウルに行って彼女に会おう。
話は決まってその場で日付を選んでマリオット系のジムとプールのあるホテルを予約した。
本題がこれで片付き、ビッグビーンズで買物してから帰宅した。
しかし、引き続き家内は食欲がないようで、カップヌードルなら食べられるかも、と言った。
そんなことを言うなどあり得ないことだったから、よほど調子が悪いのだろう。
わたしは近所のスーパーへと足を運んでカップヌードル2種類とマルタイラーメンを買ってきた。
それをおいしいと言って食べる家内を横目に、わたしは買ってきたコロッケをあてにハイボールを飲んだ。
と、家内の携帯に次々と連絡が入ってきた。
ひとつはヘッドマッサのカリスマからで、日曜に空きが出たのでいかがでしょうか、とのお誘いだった。
これはまさに救いの連絡。
ヘッドマッサが家内に完全な回復をもたらすのは間違いのないことだった。
そして、空きが出ればとお願いしていた予約困難な寿司屋と居酒屋から立て続けに予約可能との連絡が届いた。
吉報はいつも決まって向こうからやってくる。
やはり家内にはツキがあるのだった。
楽しみがあると疲労は癒える。
カップヌードル効果も相俟って、家内はいつもの元気を取り戻し始めていた。