夜になってもクーラーが欠かせない。
それくらい今夏は暑いとのこと。
しかし、大阪に比べれば過ごしやすく夏はこれくらいがちょうどいいと感じた。
ただ地球沸騰と言われる時代である。
海辺から吹く夏の涼風はプサンにおいても過去の話となっていくのかもしれなかった。
ドライバーのイさんの勧めに従って、昼はユッケピビンバと海鮮チヂミを食べることにした。
一口食べて驚いた。
かなり美味しい。
二口目も三口目も同様。
出だしから味の歓待を受けているも同然と言えた。
食べた後、今後の予定を話し合いながらクルマで街をぶらぶらと案内してもらい、夕刻を前にホテルにチェックインした。
夕飯もまたイさんのおすすめどおり、チャーシューの人気店へと赴いた。
店の真ん前で降ろしてもらい、「では明日」とイさんに手を振って夫婦ふたりで中へと入った。
金曜の夜、店は混み合っていたがタイミングよく空席に恵まれた。
わたしたちのすぐ後の客は入り口にて順番を待たねばならず、その組数はどんどん増えていった。
周囲を見渡すと、大皿に山と盛られたチャーシューを誰もががつがつと頬張っていた。
その食べっぷりに背を押され、わたしたちも大皿を頼んだ。
料理が一揃い運ばれて、食べてこれまた驚いた。
実に美味しい。
箸が止まらないから「ガツガツ」となるのも当然の成り行きと言えた。
ああ、満腹と店を出て通りを歩き、5年前にホットクを買った屋台を見つけて懐かしく、ひとつ頼んで二人で分けた。
あちこち歩いて疲れ、ロッテ百貨店近くにいい雰囲気のカフェがあったからそこで休憩することにした。
通りを歩く一般の方々と客層が異なって、おしゃれで品よく小綺麗な奥様方ばかりだったから目を引いた。
体力が回復したところで、店を出た。
日は落ちて数々の照明が街を美しく照らすなか、夜風に吹かれ影島大橋を渡ってホテル方面へと歩いた。
ホテル前の船着き場が屋台通りになっていて、数多くの屋台が軒を連ね大勢の飲み客で賑わっていた。
どこで食べようか。
わたしたちは行きつ戻りつ店を物色した。
ここで食べるのが今回の旅の目的の一つだったから、慎重に店を選んで、店主夫婦の人柄が最も良さそうな店を選んだ。
海鮮数品の他にビールを注文し、続いて、現地の人を真似てチャミスルも頼んだ。
出てきた品のすべてが美味しく、なんでも美味しい。
それに海から吹く涼風が心地よく、異国の夜のくつろぎ感が相俟って旅情が更に深まった。
これぞ旅という出だしに思わず頬がほころんで、わたしたちはチャミスルのお代わりを注文した。