朝起きると窓一面に水滴がかかり、向こうに見えるビル群には白っぽく靄がかかっていた。
28階の部屋から路上に目を落とすと道は雨で黒ずみ、ちらほらと傘を差す人の姿が見えた。
自転車に乗るのは諦め、電車で移動することにした。
朝10時にはチェックアウトしフロントに荷物を預け、傘を借りた。
渋谷から山手線に乗って高田馬場で降り、そこからバスで早大正門前に向かった。
小雨によって日曜の静けさが更に増し、前日以上に冷え込んでいたから一層趣き深く、そんななか夫婦でぶらりと歩いた。
休日であるから全体的に人はまばらといった様子だったが、学生のほか、見学に来たのか家族連れがいて、台湾や韓国からの観光客といった風な人の姿も見えた。
先日放送されたアド街ック天国は早稲田特集で村上春樹ライブラリーが紹介されていた。
息子の入学以来、早稲田大学には何度も足を運んでいたが、今回はじめてなかを覗いた。
小雨降る日曜、静かに過ごすにはうってつけの場で、学生がする生演奏もその静けさに興を添えているように感じられた。
ひととき過ごし、ランチの予約時間が近づいてきたので早稲田から九段下を経由して池尻大橋へと向かった。
下々の民であるにもかかわらずわたしたちは、東京っぽいハイソな感じの客らに混じって贅沢にも昼からワインを飲んでフランス料理を楽しんだ。
店を出ると雨はあがって、風が冷たさを増していた。
代官山へと足を向け息子のための服など見て回り、蔦屋でわたしは村上春樹の文庫を買って、家内は英会話のテキストを選んだ。
日が暮れてあたりが明暗の暗へと取って代わられる時間帯、IVY PLACEのテラス席にて向かい合い、バーボンを味わいつつそれぞれ本のページを繰って過ごした。
やがて帰阪へと向け動き出さねばならない頃合いとなって渋谷へと戻り、何かお祭りでも開催されているのかといった人混みを縫って荷物をピックアップし、山手線に乗って品川駅へと移動した。
そして駅構内のちょっといい感じの和食屋で女房と日本酒を飲みおでんをつまみ、汽車の時間を待った。
ほどよく出来上がって、こんな感じが最高だねと酔って気分がいいから夫婦でニコニコと語り合い、わたしたちは車中の人となった。