朝10時過ぎにチェックインし部屋の内容を確認してから、雨模様のもと傘を借り中洲方面へと向かった。
肌寒い博多の街路をぶらり歩いて10分ほどで到着し、店の前で記念撮影する若いカップルがいたので家内が声を掛けた。
釜山から来たというから、釜山談義でわたしたちは盛り上がった。
暖簾がかかって席へと導かれ、残念ながら彼らとは別の小部屋へとわたしたちは案内された。
そこは4人部屋で、わたしたちに続いて男前な青年二人が入ってきた。
もちろん家内は気さくに話しかけた。
彼らは香港の大学生で、ひとりは医学部でもうひとりは経済学を専攻しているとのことだった。
福岡を旅先に選んだ理由は、いまナショナルホリデーの時期に差し掛かり、東京と大阪はめちゃ高い、福岡はめちゃ安いからとのことだった。
いちばん好きな街は札幌だがいまはちょっと寒すぎる。
一人33,000円の寿司は学生にとって高すぎないか。
家内がそう聞くと香港の方がはるかに高いと彼らは笑った。
記念撮影などしてインスタを家内は交換し、息子が早稲田だと言うと、やはりアジアの名門、彼らはもちろん知っていた。
わたしもだと小声で付け加えると、あそうそうこの人も早稲田だと家内は思い出したように言った。
会話で雰囲気が和み、寿司を味わう時間がより良いものになっていった。
絶品の寿司を満喫し職人さんとも寿司談義が弾んだ。
関西の情報も気になるようなので、西宮だと長崎出身の大将が切り盛りする「たけ屋」がバツグンに旨いと職人さんにオススメして店を後にした。
雨が降り始めていたので、通りでタクシーを拾ってホテルへと戻った。
エレベータに同乗したアメリカ人夫婦にももちろん家内は話しかけた。
家内はスモールトークを躊躇しない。
というより、それがマナーだと心得ているのだった。
誰か他人と気軽に話す習慣がわたしにはないから、当初はどぎまぎしていたが、いつからか楽しもうと決めてなるべく話に加わるようになった。
僅かばかりのちょっとした会話で、ぱっと生まれる何かがある。
それは人にとって大事なことなのだと、いまでは家内の習性にリスペクトの念を抱いている。
ホテルのジムで筋トレし、パーソナルで覚えたというトレーニングを家内から教わって、トレッドミルで必死に走り、なんとか昼の摂取カロリーの幾許かを消費した。
夕刻、雨が本降りとなってきたのでタクシーで「水炊き長野」を再訪した。
鶏はどれだけ食べてももたれない。
この日の午後、福岡のローカル番組で地元のうどんが特集されていた。
だから、水炊きのあとの締めはうどんで決まりだった。
雨のなかタクシーで天神方面へと戻り、西鉄福岡のコンコースにある店に向かった。
それが意外や意外。
単なる立ち食いといった趣きとはまったく異なり、本格的においしくてびっくりした。
大学生だというかわいい女子店員に「うちに嫁に来ないか」といった勢いで家内が話しかけ、家内にかかれば嫁の一人や二人連れ帰るのは容易いことなのかもしれないとわたしは思った。
二次会用のお酒とつまみを福岡パルコの地下食で仕入れ、日曜を前に賑わう繁華街を歩いてホテルに戻った。
出だし上々の博多滞在一日目となった。