思い出へと回帰する季節

このところ急に涼しくなった。

朝晩は寒いくらいである。

 

季節がいいからどこかへ出かけよう。

家内と意気投合し、この秋は、ランダムに選んで日本の地方都市を巡ることにした。

 

その第一弾として、高知を選んだ。

選定は当てずっぽう。

特に明確な理由はなく、ふと頭によぎった地だった。

 

宿をおさえ食事処を予約し、手配を終えた瞬間、強烈な記憶が蘇ってきた。

 

わたしたちが高知を訪れたのは、長男が中学受験を終えた2013年の、灼熱の夏のことだった。

 

高知市内から四万十、そして足摺岬へとクルマで回った。

折しも、四万十の江川崎が41°Cを記録し、「暑さ日本一」となった年のことである。

 

太陽にじりじりと焼かれながら、まだ幼さの残る息子らと海や川でさんざん遊び、夜は満点の星の下で天体観測を楽しんだ。

 

あれから12年が経過した。

もはや息子らは、海や川で無邪気に遊ぶような年齢ではなくなった。

 

それぞれが自分の世界を広げ、東京で暮らしている。

 

当てずっぽうと思いながら、しかし、意識の底には高知への懐かしさが潜んでいて、その地名が浮上したに違いない。

 

数々の思い出を各地に刻んできた。

知らず知らず、わたしたちはその時間へと回帰する季節を迎えたのだろう。

 

その地に映し出される過去と現在がひとつの風景となって重なり合う。

そんな旅の始まりに心がはやる。

2013年8月 高知県