帰宅するとEXOのリズムに乗って家内がノリノリで夕飯の支度をしていた。
「これでも見て待ってて」
わたしをテーブルに座らせ、家内がタブレットを置いた。
EXOが踊って歌う画面をわたしは眺め、家内の二万語に耳を傾けた。
この日、街で自転車を駆るチビッ子を見かけたという。
ヘルメットがぶかぶかで可愛く、ついついうちの子らの小さな頃を家内は思い出した。
あの頃、スマホがあればどれだけたくさんの動画を撮影したかしれない。
そう言いつつ、昔の記憶が家内のなかで再生され始めたのだろう。
遠い目となって以降、話題は我が子のことで占められた。
前菜は伊勢で手に入れた山芋を潰して載せたとろろご飯。
そこにハマチとタイの刺し身が添えられた。
家内は料理しつつ赤ワインを飲み、わたしはノンアルをグラスに注いだ。
まもなくチンと温まった骨付鳥が野菜スープとともにテーブルに差し出され、その後をおって牡蠣のオイル漬けがやってきた。
そして〆の品はタコのペンネ。
パルメザンチーズとタバスコをふんだんにふりかけて食べるが、隠し味のガーリックが効いて実においしい。
だからわたしはおかわりし、パンまでせがんだ。
わたしが満腹になったのを見計らい、家内は二男に電話してどうでもいい話をスピーカー設定で繰り広げ、折よくそこで長男からわたしに電話がかかってきたので、会話が四人でクロスして家族全員で会話しているも同然となった。
今度上京したときには、寿司。
そう話が決まって、「楽しみで仕方がない」との二男の言葉が夫婦の胸に深く刻み込まれた。