午後の訪問先は自宅近くだった。
事務所に行けば遠回りとなる。
その時間が勿体ない。
だから朝から自室にこもって業務に勤しんだ。
六時半に前の公園でラジオ体操がはじまり、そして蝉が鳴き始めた。
夏を代表する風物詩を味わいつつ徐々に仕事に熱が入って、気温もぐんぐん上がっていった。
昼には37℃にもなったから、危険な暑さと言えた。
訪問先への移動にはクルマを使うことにした。
灼熱の世界を外に眺めつつ車中で涼んで、音楽を聴いてちょっとしたドライブを楽しんだ。
半時間ほどで到着し、一時間以上明るく快活に喋って、帰りは行きよりはるかに心軽やか夏の市街を駆け抜けた。
まもなく家内が帰宅した。
朝からヨガのレッスンを受け大阪で買い物し、引き続き元気はつらつ、パワーに溢れる家内であった。
では、と家内の運転でジムへと向かった。
わたしは泳ぎ、家内は筋トレに励んだ。
サウナに入り風呂も済ませてマッサージチェアで寝そべって過ごしていると、「出たよ」とのメッセージが家内から届いたのでロビーで待ち合わせた。
やあと手を上げ家内と合流し、終業間際の西宮阪急に寄った。
家内の後をついて歩いて買い物を済ませ、夜八時、家で団欒の時間を迎えた。
わたしはノンアル、家内はワイン。
向かい合って簡単な夕飯を食べながら、家内の二万語に楽しく耳を傾けた。
何気ない場面が名場面。
ふとそう思った。
今日一日をとってみても名場面が随所にあった。
そんな名場面が一つ一つ心のなかにたたみ込まれていく。
わたしはそんな日常を生きているのだった。