ランニングを終えて家に戻ると家内が言った。
タイ料理を食べよう。
そう言ってすぐ目当ての店に予約の電話を入れた。
家内がハンドルを握って高速を突っ走り、途中、覆面パトカーらしき車影に気づいて機転よく減速し、それでも大阪の新福島まで半時間もかからなかった。
やはり家内の運転テクは素晴らしい。
新福島には結構な数の名店が潜んでいる。
食べログで検索すると軒並み高評価の店がずらりと並ぶが、日曜ともなると大勢の人で賑わい、検索せずとも店先に集まる人の多寡でどの店の評価が高いか一望のもと見渡せる。
もし予約の電話が一足遅かったらわたしたちは席を得ることができなかっただろう。
わたしたちが着席した後、店をのぞく人々はことごとく失望の色を顔に浮かべる他なかった。
シェフがみなタイ人であるから、やはり本格的ということになるのだろう。
出てくるものすべてが本場の味を醸して美味しく、だから夕飯もタイ料理にしようと決めて、カレーを二人分テイクアウトした。
好天に恵まれた日曜の午後、若い恋人同士など多くのカップルが行き交うなか、夫婦でそこら一帯をぶらりと歩いた。
いろいろな店があって、目移りしながら今度来たとき訪れる店を探しに探し、幾つも候補が挙がったから、楽しく収穫多ともなる散策となった。
連れ合いとなってまもなく24年。
振り返れば、夫婦で右往左往してばかりの年月であった。
ここにいたってようやく。
「ぶらりのんびり」できることの幸福に辿り着いた。
さあ、日曜日はこれから。
次の目的地に向け家内がクルマを走らせた。
街から舞台が変わって続いては山。
曲がりくねった急な斜面をすいすいと走って、わたしはまたしても家内の運転テクに感心させられることになった。