KORANIKATARU

子らに語る時々日記

2021-09-01から1ヶ月間の記事一覧

遠い昔の声が耳に届いた

夜、風が涼しい。 ベッドに横になり秋の空気を満喫しつつ本の頁を繰る。 隣の家から家族団欒の声が聞こえてくる。 左隣からは母娘で何か一緒に歌う声。 歌番組でも観ているのだろう。 一方、右隣からは父娘の歓声が届く。 こちらはスポーツ観戦だろうか。 そ…

息子らによって秋の味わいが一層深まる

記憶は定かではない。 神戸でピザを食べた帰りだろう。 ということは長男が5歳で二男が3歳。 どこか建物の前で二人がおどけて踊っている。 ともに笑顔。 そんな写真を自室のデスク横に貼ってある。 仕事を終え武庫川を走り先ほど宅急便の再配達を受け取り…

デフォルトは笑顔

近所に越してきた奥さんが、知らぬ顔をする。 顔を合わすたび会釈するのに無視されるから気が悪い。 そんな話を父から聞いていたので、当然、わたしは会釈すらしない。 実家に寄る際、その奥さんをしばしば見かける。 わたしがとおりかかるときには夫もいて…

鉄人がチラと姿を現した

日曜の午後、雨があがるのを見越して武庫川に出た。 が、走り始めた途端、雨脚が強まった。 今更、引き返せない。 天気の回復をあてこんでそのまま走った。 急に秋めいて風がひんやりとし、そのうえ雨。 人影はなく、視界には勢いを増す川の流れと雨滴とわた…

次の動きが速くて全く無駄がない

土曜日は朝から夕刻までデスクワークに勤しんだ。 普段は外出が多いのでそのようなことは珍しい。 かなり捗った。 仕事にかかる前の気重さが消え去って、心は晴れ渡った。 頭を使うのは楽ではない。 だから相手がデスクであっても立ち向かっていく際には幾許…

相棒がいてこそ胸が膨らむ

敬老の日、実家に寄ってひととき父と過ごした。 二人でぽつりぽつりと会話する。 少しでも前向きな話題にしよう、そうわたしは心がける。 いい季節になる。 孫が元気に過ごしている。 時間の射程を長めにしそこにも良いことを散りばめる。 そのうちコロナ禍…

この日いちばんの幸

昼前には出かけると家内が言うので、午前中に武庫川を走った。 日差しはずいぶん和らいで、風が気持ちいいからへばることがない。 ちょうど一時間走ってシャワーを浴びた。 ほどよい疲れのまま家でのんびり過ごしたいとも思ったが自身を励まし支度した。 向…

遠い目をして物言わぬ過去を振り返る

到着したその日、二男からメッセージが届いた。 何もない僻地。 飯は刑務所レベル。 男三人で耐えるしかない。 行間に絶望との文字が垣間見えたが、わたしは彼を励ました。 たまにそんな過ごし方をするのも悪くない。 日常のありがたさをそこで学べばいい。 …

巣立った後もコミュニケーションが欠かせない

日曜早朝。 ラグビーの練習があると言ってこの日もまた息子が先に部屋を出た。 家内とともにその背を見送って、チェックアウトの時間までのんびり過ごし山手線で東京駅に出た。 風爽やかな秋晴れ。 自然、気持ちも浮き立った。 ビジネス街の広々とした緑陰の…

強固な平穏のなかスヤスヤ眠った

午前中は雨が降り続く。 そう覚悟していたが突如空が明るくなり、下界をみると誰もが傘を畳んで歩いていた。 このまま天気が回復する、そう思えた。 傘を持たず階下に降りて外に出た。 渋谷川を渡り明治通りでタクシーを拾った。 土曜朝の静けさのなか、クル…

東京は秋がいい

9月の初旬は鳴門の海で二男と過ごした。 そして、うちには息子がもう一人いる。 今夏、彼は忙しく帰省もままならなかった。 それでわたしたちが動くことにした。 この秋の入り口、長男に会うため大阪を発った。 新幹線との比較を兼ねて久々、飛行機を使って…

自分の出した答えが正解

上海を舞台にしたドラマ『30女の思うこと』を先日ようやく見終えた。 全部で43話あると知った段階でとても見通せないと思ったが、家内が録画してくれていたのでちょくちょくと見て、いつしか夜の楽しみとなり結局欠かさず家内とともに最後まで見続けることに…

効き目はお預け

日曜の夜。 週明けの業務に備え、マッサージを受けることにした。 指名したのは名人アキシノ。 しかし、いつもと様子が異なった。 指にまったく力がない。 カーロス・リベラの弱々しいパンチとそれに涙する矢吹ジョーの姿が頭に浮かんだ。 おそらく丸一日予…

多芸多才が家族を率いた

バイタリティが並ではない。 だから興味があれば試みる。 家族のために。 まずはそんな動機から耳ツボの施術を知人から教わった。 センスがいいから飲み込みが早く応用も利いた。 周囲に試すとすぐ評判になった。 だから、施術に関するイベントがあると声が…

頭を使うと腿が凝る

甲陽出身者は頭の回転がめちゃくちゃ早い。 印象論の域に過ぎないが、そう実感している。 この日の午後、対する院長は甲陽出身の方であった。 話にスピード感があって、ぼーとしてしまうと置いていかれる。 だからアクセルを踏み込み精一杯の出力で追走する…

書けばきれいに忘れることもできる

深夜に至ろうとする時刻。 前触れもなく二男が帰ってきた。 知人宅に泊まるはずであったが、彼はひとり逃げ出してきたのだった。 さっさと荷物をまとめて知人宅を飛び出し、駅に向け真っ暗な住宅街を一目散に駆け抜けた少年は当時小学3年生だった。 無事生…

休日に新たなバリエーションが加わった

のんびり過ごそう。 そんな気分で迎えた日曜日であった。 朝食は軽くクッキーで済ませて、まもなく昼。 おいしい店がある。 家内がそう言うので高速を飛ばして神戸に向かった。 名は圓記(ユンキー )。 路地の奥まったところに店は所在した。 どこか東アジ…

10代の縁が40を過ぎて効いてくる

この先どうなっていくのか。 そのときには分からない。 あとになってようやく気づく。 いま思えば、あのときがわたしにとってカンブリア爆発の端緒のようなものであり、地質年代上の記念碑的な瞬間だった。 いまの多彩はその一点に収斂されていく。 末広がり…

この日を一生忘れることはない

クルマに母を乗せ病院に連れて行ったのは土曜日の朝のことだった。 わたしが運転し母が助手席、下の妹が後ろに控えた。 東京から上の妹が駆けつけ、新大阪からタクシーで病院までやってきた。 点滴を受け終え、母の症状は落ち着きを見せた。 上の妹がいるこ…

持て囃す側にも一片の責任

キッチンに水漏れが生じていた。 「ちょっと見てもらえませんか」 この日やってきた掃除屋さんに家内が試しに聞いてみた。 二つ返事で掃除屋さんが対応してくれた。 シンク下にもぐって数分。 何かが緩んでいたようで水漏れは呆気なく解決をみた。 掃除屋さ…

自信満々で決勝リーグを迎える

予選を一位で通過する必要はなく、ましてそこで華々しい活躍が求められる訳でもない。 決勝リーグにコマを進めることがでれきばそれで順風満帆と言っていいのではないだろうか。 つまり、いま対峙する相手に圧勝することなど全く不要。 僅差の勝利かドローで…

近場で海を満喫し尽くした

三日目の朝は和食のビュッフェだった。 ここでもまた育ちが露わとなった。 主食としてご飯とうどんと蕎麦が並ぶ。 もちろんわたしは全部をトレイに載せた。 着席し彼我の差を目の当たりにした。 息子も家内もご飯だけ。 主食が3つ並ぼうが、彼らにとってそ…

父子の間に生まれた友情

ビュッフェで育ちが明らかとなる。 鳴門二日目の朝は洋食。 ハンバーグやウインナーなど子どもが喜ぶようなメニューをわたしはてんこで盛って、卑しい育ちを白日のもとに晒した。 二男はと見れば、食べる分量だけ上品にもって、おまけに過半をサラダが占めて…

漏れなく応援団がついてくる

予約に空きが出た。 夕刻に連絡があり家内は芦屋に向かった。 いつまで経っても女子は女子。 アンチエイジングを含めた体調管理には専門家の高度な知見が欠かせない。 だから折々、芦屋の阿部レディースクリニックを訪れる。 院長は大阪星光の33期。 親身に…

鳴門海峡にてさよなら夏の日

明け方から仕事に掛かって午前中には区切りがついた。 家内と二男を伴い大粒の雨が打ちつけるなかクルマを走らせた。 淡路島を縦断し渦潮の海を渡って午後1時過ぎ、鳴門に到着した。 すっかり雨があがって、雲間から時折日が差した。 人気店びんび家も人が…

親のスタイルが集積する場所

内面と外面だけでなく様式も継承されていく。 息子の部屋の写真を見るとコルクボードが掛かっている。 素っ気ない天板だけの机の上に置かれた筆記具は2Bの鉛筆でノートの大きさはA4。 わたしの作業まわりと酷似している。 効率を考えれば机はでかく簡素な方…

たまに引っ越しするのも悪くない

夜、虫が鳴き始めた。 まもなく秋。 季節の移り変わりを思いながら、その音色に耳を傾けた。 しんと気持ちが静まって心地いい。 が、次第その音色が「ビーマイベイビー、ビーマイベイビー」と聴こえ始めもう他に聴こえようがない。 そうなると誰かのシャウト…

甲冑と自身のサイズが合致した

仕事を通じ喜んでもらえると嬉しく褒められると嬉しく新たに声がかかると更に嬉しい。 責任重大だから楽ではないが苦でもない。 節目節目に訪れる喜びを思えば、差し引きプラス。 人生のなかで仕事が重きを占めて、それが喜びの源泉という今の状況はとても幸…

善き人は甲斐甲斐しい

息子が一人で設営し、ベランダ焼肉の舞台が整った。 照明、蚊除け、シート、椅子、炭火、食器、飲み物。 すべて整って万全。 なんと楽ちんなことだろう。 彼が受験生だった頃、わたしがその役割を引き受けていた。 思えば結構たいへんな作業だった。 家族三…

一掴みの縁だけが最後に残った

午後、ぶらりと実家に寄った。 差し入れが美味しかったと父が言う。 それを聞けば家内が喜ぶ。 張り切ってもっといろいろと作るに違いない。 料理について言葉を交わし、互い笑って顔を見合わせた。 そのとき、一瞬の沈黙が訪れた。 双方の頭に浮かんだのは…